学習目標・学習計画表とチェックシート,課題達成の ために収集した資料や遂行状況,レポート,成績単位 取得表など)を長期にわたって収集したもの。それら を必要に応じて系統的に選択し,学習過程を含めて到 達度を評価し,次に取り組むべき課題をみつけてステ ップアップを図っていくことを目的とする。従来の到 達度評価では測定できない個人能力の質的評価を行う ことが意図されている(中略)。 (27) (下線は筆者による) ①結果と過程の見通し 単元開始時には,生徒に単元全体の見通しをもたせるためにガイダンスの時間を設け,単元を通して付けたい力やねらい,時数やスケジュールを提示する。そして,単元のゴール地点のモデルをALTやJET,過年度生の映像などを使って示す。それにより,生徒は提示されたモデルのよい点や発表内容の構成の分析を通して,自身の単元終末の姿をイメージすることができる。 また,目標達成に向けて帯活動やユニットラウンド制による言語活動を段階的に組み込む。ゴールに到達するために,学習過程でどのように活動を進めていけばいいのかを生徒と共有し,生徒自身が学習活動を行う自分を具体的にイメージし,学習への構えを作ることができるようにする。英語の授業においては,数種類の帯活動を組み合せて授業を構成している指導者が多い。それらの帯活動が授業や単元の中に点在するのではなく,それぞれの言語活動が目標到達のためにどうつながっているのかを生徒が見通した上で,個々の活動に取り組めるようにガイダンスで共通理解をする時間を設ける。 ②結果と過程の振り返り まず,相互評価の具体として,パフォーマンス課題に向けて他の生徒に事前に発表をし,聞き手からの評価を受けて振り返りをし,作戦会議後,もう一度同じ生徒に聞いてもらう。そして,先ほどより伸びた部分とさらに改善が必要な部分とを明確にした上で,本番のパフォーマンス課題に臨むなどが考えられる。相互評価が次の学びに向けての意欲を促すことができるよう,生徒間のつながりを大切にしながら学習集団としての雰囲気を作り上げるための手立てである。 次に,これまでの学習を振り返る時間として,この単元で自分が理解したことやできるようになったこと,達成されずに課題として残されていることなどを把握する。言語面と内容面から自身の発表を振り返るとともに,他の生徒の発表についてアドバイスし合うことにより,次の学びにおいてより質の高いパフォーマンスを目指すことができるようになると考える。 また,学習過程でどのような活動を進めたからゴールに到達できたのか,うまく機能した学習方法や意識的に取り組んだこと,不十分な点等を整理し,学習過程の振り返りを行う。そして,継続的な学習意欲につなげるために,それを次の学びの機会に再確認する時間を設け,よりよいコミュニケーションへ向けて自身の課題に向き合いながら取り組むための手立てとする。 (次頁へ続く) 学生が,学習過程ならびに各種の学習成果(例えば,①「~ができる」の段階では,比較的短期間で目標が達成できるもので,CAN-DOリストにより目標設定が可能である。また,活動終了後,このリストを「振り返り」のための自己評価シートとして活用することで,目標達成の度合いを確認することができる。 ②「~ができるようになる」の段階の目標は,1学期後,1年後といった比較的長期的なものであり,①の目標を達成した結果,到達することが可能なものである。 中学校 英語科教育 13 英語学習ポートフォリオ 105 (2)CAN-DOリストを活用した 見通し・振り返り学習を充実させるために学習ポートフォリオを活用する。 学習ポートフォリオについて,文部科学省は次のように述べている。 この「従来の到達度評価では測定できない個人能力の質的評価」という記述は,「これまで総括テストのみで行ってきた評価を,学習者の学習の記録を活用して,個人としての様々な要素を考慮したものへと変える方向性」(28)を示していると清田は述べている。 このように,ポートフォリオは学習を短期的な結果のみから考えるのではなく,学習の全体を通して,個人が自らの学習の意味や価値を考える上で,将来の英語使用者としての意識を育てるという観点からも,英語学習にそぐうツールであると考える。このポートフォリの性質を活用し,生徒の見通しと振り返りを充実させていきたいと考える。 また,髙島は「教師と生徒が目標設定や到達度の確認,学習計画の変更,修正などのための振り返りの時間を持つことで,反省点や改善点を見出すことができる。このような時間を共有することは,生徒自身が『自らの学びをつくる』こととなり,学習への意欲を持たせる重要なプロセスとなる。」(29)と述べ,次のようにまとめている。
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