話すこと[やり取り] ・関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて 話すこと[発表] ・関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて (23) (下線は筆者による) 実際のコミュニケーションの場面においては,事前に話す内容や返答について頭の中で十分に考える時間を取ることなく,即座に相手とやり取りすることが求められる。よって,事前に話す内容について原稿等を用意して覚えるなどの準備時間なしに,「即興で」相手と意思疎通を図ることのできる能力を養うことが求められていることがわかる。解説では,「メモやキーワードを頼りにしながらであっても即興で発表すれば,多少の誤りやたどたどしさがあるのは当然であるという認識の下に,生徒が主体的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度を養う必要がある」(24)と述べられており,コミュニケーション能力の育成を目指し,即興での言語活動に注目が集まっていることがわかる。 図2-8 領域を統合した言語活動と学びの可視化の関連図 生徒が主体的に学びへ向かうためには,まず生徒が見通しをもった上で自身の学習を客観的にとらえ,目標達成に向けて何が必要なのかを自ら考え,実行に移すことができることが大切である。そして,自分が行っている学習を常に振り返りながらモニターすることができるようになることも必要である。そこで,見通しと振り返り活動をデザイン化し,授業に組み込む。また,各領域の学習をラウンド制で段階を追って進めることにより,その達成度を振り返ることが可能になると考え,ポートフォリオを作成する。 ことができるようにする」(22)というわずか一か所に留まり,その一方で,次の「即興で」という新たな文言が「話すこと」の項目において二か所に加えられている。 近年では,学校現場においても「正確さにこだわるから話せなくなる。」「間違いを恐れずに,とにかく話すことが大事だ。」という声が多く聞かれ,正確でなくともまずは間違いを気にせず話したり書いたりする言語活動を積極的に取り入れる指導者も増えてきている。例えば,1分間の会話を続けることを目標に設定された言語活動の時間には,生徒たちはリアクションやジェスチャー等を駆使して何とか会話を継続させているように見える。しかし,その中身を見てみれば,生徒たちは必要以上のジェスチャーや単語の羅列で会話を何となく進め,設定された時間を何とか凌いでいるという場面も多く見受けられる。「即興で」伝え合ったり話すことができる力の育成を図ることは,「正確さ」を軽視したり否定したりするものではなく,英語でのコミュニケーション能力を身に付けるためには,これらをバランスよく習得していかなければならないことは言うまでもない。 よって,本研究ではこれらのバランスを踏まえた指導を行う。関心のある事柄に関するパフォーマンス課題では即興で伝え合うものを設定する。その後,正確さ獲得のために,パフォーマンスを録画した動画を生徒に与え,自分の発話をディクテーションすることで自己分析と修正を行う。 即興で伝え合うことができるようにする。 即興で話すことができるようにする。 中学校 英語科教育 11 また,教科書には福祉,環境や貧困問題,人権などのSDGs(持続可能な開発目標)に関わる社会的なトピックも多く取り上げられている。 解説にはこのように述べられている。 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことにつ いて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡 単な語句や文を用いて話すことができるようにする。 (25) ここには「即興で」という文言は見当たらない。筆者は,社会的な話題に関する課題においては,読んで得た情報を引用するなどしながら,しっかりと自分の考えを構築した上で,自身の考えや意見を伝えられるようになって欲しいと考えている。よって,メモ等を参考にしながら事前に発表内容の構成を考えたり,練習したりする準備時間を設定することとする。 第3節 学びの過程の見取りについて つながりのある言語活動の中で中心に位置付ける領域統合型の言語活動をユニットラウンド制で展開し,各領域の学習を段階別に進める。そして,そこに学びの過程の見取りの大きな視点となる学びの可視化を組み合わせる。 図2-8は領域統合型の言語活動と学びの可視化の関連図である。 103
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