102 のラウンドに至るまで,それぞれの段階で異なった言語活動を配列し, ストーリーの全体像の把握から詳細の読み取りに進み,最終段階でもう一度全体をとらえる流れになっている。全体像をつかむために文章の概要をとらえることから始め,段落を基本的な単位とし,それぞれの段落における要点を押さえる。そして徐々に詳細に焦点を当てるため単語や言語形式に注目しながら意味内容の理解を深めていく。このように,Part 1からPart 4までを通したラウンド毎に異なる言語活動を繰り返しこなしながら,徐々に「聞くこと」「読むこと」のインプットから「話すこと」「書くこと」のアウトプットにつなげていき,「話すこと」「書くこと」のラウンドにおいてパフォーマンス課題を設定する。このような実践により,生徒の中でPart 1~4のストーリーがつながるだけではなく,パート毎に配置されている言語材料や語句も繰り返し使う中で定着していくのではないだろうか。また,指導者の視点からは,各領域で付けたい力が明確になるとともに,ユニット全体を見通した単元構想及び授業設計が可能になると考える。 また,図に示されているように,新出語句と言語材料の導入を「読むこと」のラウンドの「わからない語句や表現の把握・推測」をする活動の直後にもってきている。このように,新出語句や言語材料の導入を遅らせるのは,わからない語句や表現があっても,前後の文脈からその意味を推測する力を付けるためである。また,生徒は単元の早い段階でストーリーの展開や大枠を把握できるため,その後,段階的に提示される新出語句・言語材料を文脈の中でとらえることができる。こうすることで,生徒たちは意味のある文脈の中で言語材料の意味や形式,どのような場面で何のために使われるのかの機能を無理なく理解していけるのではなかろうか。言語本来の目的である意味伝達を優先し,その上で重要になってくる言語形式への気付きを支援するアプローチであり,単に言語形式に注目するのではなく,その言語形式がどういった場面でどのような意味を伝えるのかという言語機能面とも結び付いているのである。 次に,「聞くこと」のラウンドでは音声と文字をつなげる活動を行う。これは,小学校外国語活動の学びを生かすアプローチであると考える。小学校外国語活動の教科化を目前に控え,ますます中学校英語科とのスムーズな接続に注目が集まっているが,その実現はなかなか難しい。 図2-7は京都市英語科教員アンケートにおける,小学校での外国語活動を踏まえた指導の工夫をしているかについての回答で ある。 「している」と回答した指導者(選択肢①②合計)は35%と少ない結果となった。小学校の学習と中学校のそれとの効果的な接続を図ることで,学びをさらに促進させようとする流れは,他教科においても重要視されているが,とりわけ英語教育においてはそのスムーズな接続は急務であると考える。なぜなら,小学校で音声に慣れ親しみ,英語の学習に前向きだった児童たちが,中学校で文字を読む,書く,単語を覚えるといった活動が入った途端に英語が一気に苦手になる傾向が多く見受けられるからである。 ユニットラウンド制を導入することで,小学校の外国語活動においてコミュニケーションの素地として養われている「聞く」ことから始め,そこで十分インプットされた音声から「読む」という文字へ徐々につなげることに重点を置くことができる。そうすることによって,中学校英語へのスムーズな接続が可能になるのではないかと考える。 (2)パフォーマンス課題 教科書の内容に関して聞いたり読んだりして得た情報をもとに,自分の考えを話したり書いたりして伝える領域統合型の授業展開において,最終の「話すこと」「書くこと」の段階でパフォーマンス課題を組み込む。 まずは,そのパフォーマンス課題に生徒たちが取り組む際に,正確さと即興性をどうとらえるかについて整理しておきたい。これまでの英語教育を振り返ると,やはり語彙・言語材料の正確さの習得に時間と労力が集中し,それらを使っての即興性のある言語活動の充実が不十分であることは,解説において指摘されている課題からも明らかである(21)。その課題を受けて,現行学習指導要領解説において11か所で示されていた「正確に」「適切に」「正しく」といった文言が,新学習指導要領解説の目標においては,「書くこと」の項目における「関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて正確に書く工夫を図2-7 小学校での外国語活動を 中学校 英語科教育 10 踏まえた指導の工夫
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