①複数の領域を関連付けた言語活動 (1)ユニットラウンド制 (2)パフォーマンス課題 ②ユニットラウンド制とパフォーマンス課題の充実に ③相互評価や活動形態の充実により,生徒と生徒がつ ①の複数の領域を統合した言語活動における課題と方向性については第1章で述べ,1年次の研究では,教科書を「読んで」得た情報をもとに,その内容を引用しながら「話す」パフォーマンス課題を設定し,一つの領域統合型の授業構築の在り方を提示した。本年度は教科書のトピックを中心に「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」のそれぞれの領域ごとに目的ある活動を組み込み,より系統的に各領域を関連付けるためにユニットラウンド制を一つの大きな視点として導入し,最後にパフォーマンス課題へつなげることとする。 本市採用の教科書は一つのユニットがPart 1からPart 4まで四つ(1年生の教科書は三つ)のパートに分けられており,それぞれのパートに言語材料や新出語句が配置されている。そしてパート毎に言語材料や新出語句の導入及び定着を図り,その後,本文の内容理解と音読練習へと移っていく展開が一般的である。 100 つながる帯としての言語活動 ながる言語活動 ②の帯活動については,1年次の研究で示した各領域をつなぐ手立てとしてのパラフレーズ練習やインタラクション練習等を踏襲する。どのようにそれらの帯活動を授業の構成に組み込むかについては,次章の第1節で詳述する。 そして③については,振り返り等との関連から次節第1項で述べていくこととする。 (1)ユニットラウンド制 ①ラウンド制とユニットラウンド制 京都市の今年度の夏季研修ではラウンド制による指導法が紹介されるなど,英語教育においてその指導法が徐々に注目されるようになってきている。ラウンド制について,和泉は「様々な異なるタスクを用いて,多面的な角度から教科書を学習することによって,読解ストラテジーを含めた,言語能力の向上を目指す指導法である。その名のごとく,授業をいくつかのラウンド(段階)に分けて,それぞれのラウンドで目的ある活動を行い,最終目標である文章内容の理解を目指す。そして,それに続く豊かな応用活動をも可能にしていく。」(16)と整理している。このラウンド制を各ユニット(単元)単位で導入することで,各領域の活動をさらに充実させられるとともに,より系統的に関連付けることが可能になると考える。本研究ではそのラウンド制を領域を統合する言語活動としてユニット毎に展開し,それをユニットラウンド制と呼ぶこととする。 そのユニットラウンド制を,特殊な行事や教材等を使用するのではなく,指導者と生徒双方にとって一番重要な教材であり情報源である教科書を活用し,領域統合の言語活動の充実を図る。 まず,一般的な授業展開と本研究の授業展開を比較する。 図2-2は,ある一つのユニットにおける一般的な授業展開を示したものである。 このように,新出語句や言語材料を導入した上で,それらが含まれる教科書本文の内容理解に迫るこの指導法は,和泉が警鐘を鳴らしている「木から森へ」の指導法である。和泉は「木から森」への授業では,単語や文構造といった細かい部分に終始注意を払うことになるが,いくら単語や文構造が分かったとしても全体像が見えてくるとは限らず,この方法では言語習得において必要とされる「曖昧さの許容性」は養われないとしている。さらに,自分の知らない語句や表現が多少あったとしても,聞き続けたり,読み続けたり,ちょっとした手掛かりをもとに推測することができるこのような能力は,長期にわたって起こる言語習得の性質を考えたとき,学習者がぜひとも身に付けていかなければならない重要な能力であると述べている(17)。「木から森へ」ではなく,「森から木」への指導の在り方が大切になのである。その指導法とは,「リーディングを中心としつつも,技能統合で行う総合的なコミュニケーションの授業方法」(18)であり,基本的な枠組みとしてラウンド制指導の形態をとるものである。 よって,従来の教科書の配列に沿った指導から発想を転換し,リーディング後の発展的な活動ま図2-2 一般的なユニットの流れ 中学校 英語科教育 8
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