小学校 理科教育 7 定することが考えられる。例えば,6年生の「てこの性質」の最後に,蛇口の取っ手の必要性について,てこのきまりを使って説明させる学習がそれに当たるだろう。このとき,単に「回しやすいから」というだけでなく,「支点・力点・作用点」など学習で習得した用語や,なぜ回しやすくなったのかを科学的なきまりや性質等を使って説明する学習を通して,適用する力の育成が期待できる。 もう1つは,科学的なきまりや性質等を学んでいく過程に設定することもできるだろう。例えば,5年生の「ものの溶け方」の学習において,ものが水に溶ける量や析出させる方法について食塩を使って学びながら,ホウ酸でも,同じことが言えるかどうかを検証していく学習がそれに当たる。複数の対象を実験していくことで,科学的なきまりや性質等の理解も深まったものになることが期待できる。このように,実際の授業の過程で,理解を深めているため,子どもにとっても適用させやすいものとなるだろう。日常生活で扱うことの多い,「砂糖では,・・・」といった違う種類のものにも適用を広げていくことも可能である。このような一般化から適用する過程では,生物分野や化学分野において設定しやすいだろう。 以上のような,適用する場面を設定することで,理科で学んだ性質や働き,規則性等を日常生活に当てはめて考える科学的な思考力・判断力・表現力等が育成できると考える。このような適用場面を効果的にするためには,指導者が適用させたい知識や技能,見方・考え方は何かを把握しておくことが必要であろう。何を学び,それをどのように適用させるかを想定した単元構想が重要である。 (4)指導の効果を見取る 子どもは単元の学習を通し,自然の事物・現象の科学的なきまりや性質等を理解し,それを日常生活に適用する学習を行っている。このような一連の学習の中で科学的な思考力・判断力・表現力等の育成が期待できる。しかし,このような力の高まりは可視化や数値化しにくい側面がある。そこで,本研究のねらいとする力の育成に迫ることができたかを見取る方法が必要である。小学校では市販のテストによりこういった力の育成を見取る部分が多いが,市販のテストだけでは科学的な根拠に基づいて表現する力を見取ることができない部分もあると考えた。そこで,論述確認テストを作成し,活用していく。この論述確認テストを153 り,電子黒板に写したりすることで,科学的な根拠に基づいて思考・判断し,表現していけるようにする。このように思考を視覚化し整理することは,自分の表現の中に,何があって何が不足しているかを客観的にとらえることができるようになると考える。さらに,交流の場では他者が何を考えていったのかがとらえやすくなると考えられる。 このような思考・判断や表現する学習を繰り返すことで,最終的にはワークシートや支援がない状態でも科学的な根拠に基づいて表現できるようにしていきたい。 これらの科学的な論述は,後述する「適用場面の位置づけ」や「指導の効果を見取る~論述確認テストの作成と活用~」における場面で科学的な思考力・判断力・表現力を見取る1つの方法として活用できる。そのため,普段の授業で,継続して指導をしていくことが大切になってくる。 (3)適用場面の位置づけ 全国調査でも明らかとなった課題の1つである「適用」する力は,理科の学習でその資質・能力を育成する場を設定していくことで育まれるものと考えられる。理科での学びは,身近な自然の事物・現象を扱っているため,子どもたちにとって見たり聞いたりしたことのあるものも多い。しかしながら,子どもはそのようなことは「当たり前」と思っていることが多く,理科の見方・考え方を働かせてとらえることはほとんどない。それを補うためには,学びと身近に見られる自然の事物・現象をつなげることを意識的に行うことが大切であると考える。そこで,単元の中に,学んだことを適用する学習を意図的に設定していくことが必要だと考える。このような学習を,意図的,計画的かつ継続的に取り組むことで,科学的な思考力・判断力・表現力等をさらに,広げたり深めたりすることが期待できると考える。 適用場面は,学んだことを新たな状況下において活用していくというものである。本市においては京都市スタンダードいう指導計画がある。通常は京都市スタンダードに基づいて学習を計画していくが,学んだことを新たな状況下で適用させる学習について,新たに設定する必要がある場合,学習を効率的に進めることで,時間を確保し,その場面を位置づける。そして,適用場面は次のように考え,設定していく。 1つは,単元の最後に学習で学んだことを適用させ,身近な自然の事物・現象を説明する活動を設~論述確認テストの作成と活用~
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