事実や証拠 電流の流れているコ イルにクリップ(鉄) が引き付けられた。 「電流の流れているコイルにクリップ(鉄)が引き付け られたから,磁石は,鉄(クリップ)を引き付ける働 きがあるので,コイルに電流が流れると磁石になる。」 事実や証拠 電流の流れているコ イルにクリップ(鉄) が引き付けられた。 図2-3事実や証拠,解釈,考えの関係と表現による説得力の違い (事実や証拠)結果を言葉で 図2-4 思考を整理するワークシート に示すなどして支援することで分かりやすることや,思考を整理する上で,「主張」「事実や証拠」「理由づけ」の関係を視覚化したワークシートを活用させていくことで支援とする。「主張」「事実や証拠」「理由」を視覚化し,思考を整理するためのヒントカードを上図2-4に示す。 152 級で共有する。そこで,炭酸水を提示する際,溶けた物を蒸発により取り出す実験を見せる。すると,何か残ると思っているにも関わらず,目の前には何も残らない事実が示されたことから,自分自身との対話が始まり,これまでの既習内容では説明できないことに気付く。そこで「何が溶けているのだろう」と教材との対話が生まれ,不思議や疑問を感じ,解明したいという思いを持たせ,「炭酸水には何が溶けているのだろうか」という問題意識が醸成することができる。このような系統性を意識した問いかけにより自分自身や教材との対話が始まり,問題意識の醸成へとつながっていくと考える。さらに,学級では複数の他者がいる。他者との対話も効果的に取り入れることで,自分の考えとの共通点や差異点に気づき,「本当はどうだろう」「どちらの考えが正しいのか」といったゆさぶりにもつながり,問題意識の醸成に向け,相乗効果が期待できると考える。 (2)科学的な論述の向上を目指して 本章第1節(1)で科学的な思考力・判断力・表現力等の育成に向け,事実や証拠に基づいて,それらの解釈を示しながら表現する学習の大切さについて述べた。では,事実や証拠とそれらの解釈とは具体的にどのようなものなのだろうか。事実や証拠とそれらの解釈の関係を整理し,表現したものと,事実や証拠とその解釈のない表現を比較したものを右図2-3に示す。 図2-3の上段にある「事実や証拠と解釈を示した表現」を見ると,「コイルは電流を流すと磁石になる」という考えを表現する際,「電流が流れているコイルにクリップが引き付けられた」という事 実や証拠に加え,「磁石はクリップを引きつける働きがあるから。」と事実や証拠の解釈を示すことで,より説得力のある表現になる。 図2-3の下段にある「解釈を省いた表現」だと, 考えに対して「どうして磁石になったと言えるか。」といった理由が分かりにくい。そのため,事実や証拠とそれらの解釈を加えて表現していくことが大切である。 そこで,事実や証拠と解釈を踏まえた表現を授 業に取り入れる際,子どもたちには「解釈」や「考え」という言葉はイメージしにくいことが考えられるため,「解釈」を「理由」,「考え」を「主張」 として提示する。また,子どもたちにとって,それぞれどれが「主張」「事実や証拠」「理由」に当たるか分かりにくいことが考えられるため,板書 「電流の流れているコイルにクリップ(鉄)が引き付けられたから,コイルに電流が流れると磁石になる。」 小学校 理科教育 6 図2-4にあるワークシートは,子どもに配布したつまり (主張)問いに対する答え ということから <事実や証拠と解釈を示した表現> 事実や証拠の解釈 磁石は,鉄(クリップ)を引き付ける働きがあるので。 <解釈を省いた表現> (理由付け) なぜかというと, 考え コイルに電流が流れると磁石になる。 考え コイルに電流が流れると磁石になる。
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