001総教C030705H30西村最終稿
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問題 形式 150 解答形式 設問数選択式 短答式 記述式 いないのではないかと筆者の経験からも感じる。このように,学んだことを活用していく場をくり返すことで,適用する力を育んでいけると考える。加えて,表2-3は本市における平成30年度の解答形式別における平均正答率を表している。 表2-3 平成30年度解答形式別における平均正答率(9) 表2-3の数値は,どれも全国の平均正答率を上 回っており,本市の理科教育の成果が表れていると考える。そのような中,選択式や短答式と比べ, 記述式では平均正答率は50%に達していない。記述式の回答として,根拠に実験結果となる「事実や証拠」を示すだけでなく,その事実に基づく「解釈」を踏まえて表現することが求められている。この「事実や証拠」と「解釈」の2つの視点をもって記述できた,いわゆる完全正答と言える正答率は約22%と低かった。この要因として,授業において「事実や証拠」と「解釈」の関係が不明瞭なまま行っていることが要因の1つではないかと考える。そのため,授業においてそれぞれの関係性を整理した授業構築をしていくことが大切であろう。指導者が「事実や証拠」や「(事実や証拠の)解釈」の関係を明確にした授業を行うことで,子どもたちは,得られた事実や証拠から判断し,根拠に基づいて表現する学習活動を行うことができるようになるだろう。子どもたちが「事実や証拠」を示すことは判断することにつながり,「(事実や証拠の)解釈」を示すことは関係づけたり妥当性を考えたりするなどの思考と関連する。つまり,事実や証拠とその解釈を示しながら表現させることは,科学的な思考力・判断力・表現力等の育成に迫るものになる。 そこで,授業において考えの根拠となる「事実や証拠」と,その事実や証拠の「解釈」の関係を整理した学習が大切であると考える。 (2)理科における学習活動 理科の学習は観察や実験などの体験活動のイメージが強いように思う。確かに観察や実験などの体験活動は大切だが,ただ観察や実験などの体験を行えば,自然に対する理解が深まるというわけではない。観察や実験を行い,事実を知ると学習直後には理解を示すかもしれないが,時間が経過(問) 平均正答率(%) (%) 18 65.7 3 69.0 3 47.8 無解答率0.8 11.5 2.1 小学校 理科教育 4 するほど,その理解も曖昧なものになってしまう。森本によると,ある学級の学習で,実験によって結果が示されると,その実験直後には8割以上の子どもが理解を示したのに対し,1年後の追跡調査では同じ問題であるにも関わらず,正答した8割の子どもの約半数は誤答となった(10)。これを,「分かった振り(つもり)をしていたのであり,(中略)検証実験で自分の考えをしっかりと再構築できていなかった」(11) からだと示した。この研究から,観察や実験をするだけでは,子どもが自然の事物・現象を十分に理解したり,さらに,科学的な概念を形成したりするには至らないことが示されている。 逆に,正しい知識を獲得させようと体験活動を制限するような知識の詰込み,授業形態でいうと講義形式一辺倒のスタイルでは,一時的な知識は身につくものの,科学的な思考力・判断力・表現力等を育成することは難しく,これから求められる他教科や日常生活,さらには社会で活用できる力の育成には至らない。 第1節で述べたこれから必要とされる思考力・判断力・表現力等の科学的な思考力・判断力・表現力等は,理科以外の各教科等においても育成することができるが,子どもの興味・関心を高めることのできる観察や実験などの体験活動のある理科の学習において育成しやすいと考える。なぜなら,観察や実験などの体験活動から自然の事物・現象に着目させることができるからである。自然の事物・現象に着目させることで,より不思議や疑問を感じさせ,問題意識を高めることができたり,解決していく過程で,科学的な事実や証拠を基に思考・判断・表現する学習活動を展開したりすることができる。このような学習を進めていく上で,観察や実験などの体験活動と言語活動のバランスが大切となる。では,どのように授業を展開していくことが求められるのであろうか。村山は「観察,実験を中核に据えながら,その前半で観察,実験に『意味』をもたせ,その後半で観察,実験に『価値』をもたせるのです。」(12)と述べている。この意味づけや価値づけのための活動が,言語活動である。「なぜ,その実験をするとよいのか」「その実験から期待される結果は何か」「得られた結果から何が言えるのか」といった言語活動を通して,体験活動の意味や価値を見いだされるからだ。このように,理科の学習は自然の事物・現象を理解していくために,観察や実験などの体験活動を中核に据えながら,その前後に得た知識

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