(3年)差異点や共通点を基に,問題を見いだす力 (4年)既習の内容や生活経験を基に,根拠にある予想や仮説 (5年)解決の方法を発想する力 (6年)得られた事実から自分が既にもっている考えを検討し, *矢印は活用問題の平均正答率と比べての傾向 めに必要な資質・能力の内容を整理すると,以下のようになる。 これらは,学年ごとに整理した,主に養う問題解決の力を育成する上で必要な力である。ここには,学年とその内容が示されてはいるものの,各学年でその力の育成だけに焦点をあてればよいのではない。例えば,3年生で「問題を見いだす力」をつけるからといって,問題づくりだけすればよいのではない。子どもの実態に配慮し,その後の予想や解決の方法を発想すること,得られた事実に基づいて思考・判断し,結論づけることも必要になってくる。 このような到達目標が示されている中,現状はどうなのであろうか。平成24年度から4月に,小学校6年生の子どもを対象に全国学力・学習状況調査が行われてきた。本研究では特に学力調査に注目していく。理科においては,現在までに3回実施されている。表2-1に平成30年度の理科における本市の結果を示す。 表2-1 平成30年度全国調査一部抜粋(7) 表2-1の設問数に注目すると,全体では16問であるが,平成27年度から全体の設問数は8問減少している。そのうち6問が知識問題,2問が活用問題であることから,「何を知っているか」という知識の量を問う出題から,「知っている知識をどう活用するか」を問うことを中心とした傾向が強くなってきたと感じる。今後の学習で育成を目指したい力というメッセージとも受け取れる。 次に,平均正答率に注目すると,主に「知識」に関わる問題(以下.知識問題)と主に「活用」に関わる問題(以下.活用問題)ともに,本市は全国平均正答率を上回る結果となった。しかしながら,を発想する力 より科学的なものに変容させるといった妥当な考えをつくりだす力 (6) 「適用」・・・理科で学んだ性質や働き,規則性等を日常「分析」・・・様々な情報や観察,実験の結果などについ「改善」・・・自分の考えと他者の考えの違いをとらえ,構想 適用 分析 改善 小学校 理科教育 3 本市,全国ともに知識問題と活用問題との格差が大きい。新学習指導要領が求める資質・能力の育成を目指す上で,課題の1つとして明らかになっただろう。続いて,評価の観点において「科学的な思考・表現」が4つの観点の中で一番低い結果となっているのが分かる。これは,全国でも同じ傾向が見られるように理科教育の課題であり,一方でこれからより高めていかなければならない資質・能力である。 では,そのような科学的な思考力・表現力の定着をはかる,活用問題において,どのような部分に課題が見られるのだろうか。活用問題は,以下の4つの問題に分類される。 「構想」・・・問題点を把握し,解決の方向性や解決法を これらの視点で活用問題を分析する。表2-2は平成30年度の活用問題を4つに分類した時の,本市における平均正答率を示している。 表2-2 本市における活用問題の正答 表2-2を見ると,「適用」の設問では最も正答率が低く,本市の活用問題における正答率(平成27年度62.6%,平成30年度59.0%)より低いことが明らかとなった。そのため,適用する場面の学習活動の設定をすることが必要だと考える。例えば,植物の成長条件について,インゲンマメを使った実験が考えられるが,この素材を使って導いた科学的な性質や働き,規則性等が,他の植物でも当てはまるような学習経験をすることで,適用する力も育むことができるようになるだろう。しかし,このような学習活動があまり行われてきて考える 生活に当てはめて考える て視点をもってとらえ,原因と結果などの関係で考える 自他の考えを修正したりより妥当な考えを導き出したりする (記述式の解答を除く)(8) 平成27年度 平均正答率 (%) 68.6 ↑ 59.0 ↓ 69.7 ↑ 69.3 ↑ 149 平成30年度 平均正答率(%) 65.6 ↑ 53.3 ↓ 78.3 ↑ 63.3 ↑
元のページ ../index.html#5