図4-1 特に顕著な子どもの記述 子どもA児の実践前は,何かを書こうとしたが, 消されていて,無解答であった。おそらく,何を どのように記述したらよいのか分からなかったと 推測できる。ところが,実践後には完答ではない <子どもA児の実践後の記述> <子どもB児の実践前後の記述> 171 改善に役立てていけると考えている。 <授業実践前後の比較,分析> 根拠に基づいて理由を加え表現する力を見取るため,単元末に科学的な論述確認テストを行った。論述確認テストの結果はそれぞれの学年で実践を進めることで成果が表れている。このことは,授業において事実や証拠に基づいて理由を加えながら主張を表現させることを意識づけた結果だといえる。一方で,短期間の実践で,子どもに印象が残っていた可能性も拭い去れない。 そこで,本研究では授業実践に入る前とそれぞれの授業実践が終わった後に,論述確認テストを行った。この実践前後の論述確認テストは,各実践校での授業実践に関わらない単元の内容を出題し,授業実践前と後では同一内容を出題した。これにより,実践前後で科学的な根拠に基づいて思考・判断し,表現する力の育成に迫れたかを比較できるようにするためである。問題の内容は,どちらの学年でも解答することのできる「電池のはたらき」についてである。電池の数やつなぎ方,向きなどを変えた場合,どのモーターカーが一番速く走ると言えるかを,検流計の電流の大きさを事実や証拠として理由を加えて表現する問題である。その実践前後について述べる。 ●子どもの記述 実践前後の論述確認テストでも単元末におけるチェックテストと同様に,解答記述から子どもの変容が見られた。図4-1に特に顕著な子どもA児(第5学年)と子どもB児(第5学年)の記述を示す。 *太枠は問題に正対する主張を選択している解答 *太枠は問題に正対する主張を選択している解答 図4-3 第5学年実践全体での論述確認テストの結果 が,「Bの方があっとうてきに電流の大きさが大きいということが簡易検流計からわかるから」と事実や証拠に気づき記述することができるようになっている。さらに,子どもB児の実践前は「直列つなぎだから」と書いていたが,実践後には「電流の大きさは大きくなり」や「電流が大きければ モーターは速く回るから」といった事実や証拠に基づいて理由を加えて表現する姿が見られた。このような変容は,多くの子どもに見られた。次に,実践前後の論述確認テストの各実践校での結果について述べる。 ●4年生の結果 本研究の実践前後の4年生の論述確認テストの結果を図4-2に示す。 図4-2の4年生の結果を見ると,実践前に比べ実 践後の方が事実や証拠を示しながら理由を加え主 張することのできた子どもが12ポイント増加している。特に顕著に表れたのは,実践前に「その他」の区分だった子どものうち4名(学級全体の約14%)が「完答」になり,1名(学級全体の約3%)が事実や証拠に基づいた表現ができるようになったことである。 ●5年生の結果 本研究の実践前後の5年生の論述確認テストの結果を図4-3に示す。 図4-2 第4学年実践全体での論述確認テストの結果 小学校 理科教育 25
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