C1 1つしか無かったら,指が1か所しか曲がらない C2 指が1か所しか曲がらないので,物が掴めない。 C3 鉛筆をにぎったり,鉄棒にぶら下がれないと思う。 これらのやり取りから,関節の働きを理解した 上で,その働きを用いて発言している様子が見られた。他にも,第5学年の上流と下流の石の違いを調べる学習において,下流の石が丸みのある石になることを理解した後,学習で提示した石よりさらに下流の石を提示して,子どもに問いかけた時のやり取りを以下に示す。 T もし,この指の関節はそれぞれ1つずつしか無か C1 1つしか無かったら,指が1か所しか曲がらない170 ったらどうなるかな? です。 C2 指が1か所しか曲がらないので,物が掴めない。 C3 鉛筆をにぎったり,鉄棒にぶら下がれないと思う。 です。 T (さらに丸くて小さい石を見せて)この石は,どの辺りにより多くありそうですか。 C1 さらに小さくなっているから,もっと下流に多くあると思う。 C2 もっと丸くなっているから,もっと侵食,運搬が働いたより下流の石です。 小学校 理科教育 24 を踏まえて考察する場面で,「水は温めると体積が大きくなると言える」という主張を多くの子どもたちがした。次に,なぜ主張が言えるか理由を示そうとした際,「温めると水面が上がったから」となった。ここで,子どもたちは事実や証拠と理由が同じになってしまうことに気づき,理由をどう表現したらよいだろうと考え始めたが,水が温められ体積が大きくなる仕組みである分子の構造や分子間のエネルギーについて関わる等の科学的な仕組みを考えたり表現したりすることは小学生では難しい。学習問題を設定する際,子どもたちにとって事実や証拠,理由,主張ができるものであるかを検討した上で授業をしていく必要がある。 (3)適用する力の育成に向けてから <成果について> 適用場面の設定により,子どもが学んだことを生かして考えていく姿が見られた。例えば第3章第3節(1)にある動物園での実践である。この学習では,実際に,複数の動物を観察したことにより生物の共通性や多様性といった理科における見方を働かせる姿が見られた。理科における見方を適切に働かせることは,深い学びをしていると考えられ,このような深い学びは,科学的な思考を深めていると考えられる。さらに,こういった適用場面の設定により,論述確認テストも戸惑うことなく解答できていた。適用場面を設定することで科学的な思考力・判断力・表現力等の育成に迫れたということは成果と考えられる。 <課題について> 適用場面については授業時間の確保という課題が見られた。平成32年度から外国語やプログラミング教育などの授業時数の確保が必要不可欠となり,規定時数以上に授業を設定することは難しい。そのため,年間を見通して,どの単元で適用場面を設定するかを考える必要がある。 しかし, 規定数以上の授業時間の確保をしなくとも,習得する学習の終末に適用させる問いかけを行うことで解決できるのでないかと考えた。実際に,実践の中で次のように行った。例えば,関節のはたらきを調べる学習では,子どもは手の指を曲げるためには関節が必要だということを,1時間の学習の中で理解した。その学習の終末に,以下のようなやり取りを行った。 これらのやり取りから,本時で学んだことを適用させる様子が見られた。これらのように,問いかけや提示の順番の工夫により1時間の学習の中でも,学んだことをもとに,適用する場を設定することができるのではないかと考える。 (4)論述確認テストから <成果について> 論述確認テストを行うことにより,子どもの事実や証拠に基づいて,論理的に思考・判断し,表現する力を見取ることができた。さらに,子どもの力を見取ることで,子どもにどのような視点が不十分かをアドバイスできたり,指導者が次の単元で指導する際に留意したりするといった指導改善,向上に活用することができた。それにより,科学的な思考力・判断力・表現力等のさらなる育成に迫れたと考えられる。 <課題について> 論述確認テストを作成していく上で何もないところから作っていくのは難しい。また,多くの小学校の担任はほとんどの教科を指導していくといったことから作成にかける時間もない。そこで,一から作っていかなかなくても,教科書の単元末にある復習の問題を参考にしながら作成することで,時間や内容についての課題も解決できるのではないかと考える。また,全単元で作成,活用しなくとも,重点単元や学期末の1単元を目安に作成し,活用していくことでも子どもの見取りや指導~実践前後の変容を踏まえて~
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