168 上のような川の曲がっている場所では,内側と外側で流れの速さにちがいがあるかを,木の葉が流れる様子を見て調べました。同じような大きさの木の葉が5秒間にどれだけ流れるかを調べると次のようになりました。 ① 表の結果からこの川の流れはA側とB側ではどちらが速いでしょうか? ② A-- Bを結ぶ川底の様子として考えられるものはどれでしょう。また,「流れる水の速さ」という言葉を使って,選んだ理由も書きましょう。 ㋐ ㋑ ㋒ ㋓ 川底の様子と考えられるのは・・・ 図3-21「流れる水のはたらき」チェックテスト 図3-22 「流れる水のはたらき」の記述の分析結果 えて表現できた完答の子どもが74%,事実や根拠に基づいて表現した準正答の子どもは0%であった。1 つ目の実践を受けて,多くの子どもが事実や証拠に基づいて理由を加えて表現していると考える。 一方で,正しい図を選べてはいるが,事実に基づかずに「川は外側がけずられるから」といった知識のみで書いている解答もあった。しかし,本単元の学習する流れる水のはたらきの性質を理解し1回目 A側 7m B側 3m *太枠は問題に正対する主張を選択している解答 2回目 3回目 10m 2m 9m 3m ていることは分かる。今後,こういった子どもには,「学んだことがこの場面でどうして当てはまると思うか」,「どこを見て,このきまりや性質が当てはまると考えたのか」という事実や証拠を示しながら主張していけるように指導していくことが大切だと考える。図3-23に「流れる水のはたらき」の論述確認テストの子どもの記述を示す。 記述にあるように,A側の方が水の流れることが速いという問題にある事実や証拠をとらえ,そのことに基づいて侵食と土地の変化の関係を説明できている。このことは,学習において流れる水のはたらきについて理解していること,さらに科学的な思考力・判断力・表現力等の育成に迫れたことが考えられる。 第1節 研究の成果と課題 本研究実践を終えて,科学的な思考力・判断力・表現力等の育成に向けて,効果的であったと考えられる手立てや今後の課題や汎用に向けて振り返って考察したことについて述べる。 (1)指導者の問いかけと問題意識の醸成から <成果について> 問題解決の学習活動を展開していくために,指導者の効果的な問いかけは,子どもの問題意識の醸成に関与すると考えられる。本実践では,単元配列の工夫により子どもの既習内容とのズレを生じさせる問いかけや,他者との対話を設定したことによる一人一人の考えのズレを認識させる問いかけなどを行った。このような問いかけを行ったことにより自然の事物・現象に着目させ,問題意識を醸成することができた。そして,問題意識を醸成させることで,子どもらが問題解決の学習活動に向かうことができるようになったと考えられる。そして,本研究で実践した問いかけの視点は,この単元だけによるものではないため,他の学習でも生かすことのできる視点であると考える。例図3-23 論述確認テストの子どもの記述 小学校 理科教育 22 第4章 研究実践を終えて
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