図3-17 論述確認テストの子どもの記述 も低いという事実や証拠に基づき,授業で学んだ金属の体積と温度の関係を理由とし,隙間の様子から冬という季節だと主張している様子が伺える。このような記述をした子どもが45%という学級 の約半数を占めたことは,学習を通して金属の体積と温度の関係を理解できたことや単元を通して科学的な根拠に基づいて思考・判断し,表現する学習を継続的に取り組んできた成果と考えられる。 (2)第5学年「植物の実や種子のでき方」 <論述確認テスト作成に向けて> 166 小学校 理科教育 20 *太枠は問題に正対する主張を選択 図3-16 「ものの温度と体積」の記述の分析結果 や水,金属は温められると体積が大きくなり,冷やすと体積が小さくなることを学んでいる。この性質を適用させて写真の道路の様子はどの季節と考えることができるかを主張させるようにしている。主張してく際には,道路の温度が日中や季節によって変化していることをとらえる必要があり,子どもの実態を踏まえると道路の温度が変化していることを問題文に提示していないと,問題状況を適切にとらえ,事実や証拠に基づいて考えることができないと考えた。そこで,図3-15のように第①問に季節による気温と道路の温度変化を出題し,道路も季節によって温度が違うことを理解できるような状況を設定した。これにより, 第②問で,道路の温度の変化から,金属のすき間の様子について理由を加えながら判断した季節について説明することができると考えた。 <論述確認テストの結果> 実際にテストを行うと①の問題に対する正答率 は,82%であった。この正答率から,子どもらは路面の温度は,夏と冬では変化が大きいということを理解していることが伺える。そして,②の問 題に対して,子どもの記述を分析した結果を図3-16に示す。 図3-16を見ると,誤答率が前回の論述確認テストの結果(図3-14)に比べ17ポイント減少し14%になった。このことは,子どもが自分の感覚や何となくではなく事実や証拠に基づいて思考・判断した結果だと考えられる。さらに図3-16を見ると,正しい図を選択し事実や根拠に基づき,理由を加えて表現することができた完答と言える子どもが45%であった。次に,正しい図を選択し事実や根拠は示したものの理由に当たる部分が不足していた準正答にあたる子どもが24%という結果であった。 また,完答の子どもの記述を右図3-17に示す。 図3-17を見ると,気温が低いことで道路の温度 この単元では,植物の結実には受粉することが必要ということを学んでいく。結実のために受粉する必要があることから,イチゴ農家が行っているより多く結実させるための工夫について説明する問題となっている。ここでは,受粉に必要な花粉をミツバチがつけている事実や証拠を基に,農家の主張を裏付ける理由を結実には受粉が必要ということを適用させることをねらいとした。そこで,事実や証拠をとらえるために第①問で,ミツバチが花粉を付けていることをとらえられるようにした。このようにして作成した論述確認テストを次頁図3—18に示す。 <論述確認テストの結果> ①の問題に対する正答率は,100%であった。このことから,子どもらは花粉という言葉の意味について理解し,さらに受粉に必要な花粉がミツバチに付いていることをとらえたと考えられる。次に②の問題に対して,子どもの記述を分析した結果が次頁図3-19になる。 図3-19を見ると,正しい主張を選べた子どもが96%となり,その内訳として事実や根拠に基づき理由を加えて表現できた完答の子どもが35%,事実や根拠に基づいて表現した準正答の子どもが32%と合計67%になった。B校では初めての実践であったが,子どもたちは事実や証拠に基づいて理由を加え主張していくことができたのではないかと考える。 続いて,右頁図3-20に完答した子どものA児の
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