001総教C030705H30西村最終稿
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図3-10 グループでまとめたワークシート もいる。決着がつく前に,話合いの時間が終わってしまった。このようなグループでの話合いの結果,上記以外のグループはどのようにまとめたかを図3-10に示す。 このグループも写真の川の形から流れる水のはたらきによって地形が変わっていった過程を理由に示し,自然にできるのは科学的に考えて正しい と主張している。話合いの様子を示したグループと図3-10のようにまとめたグループがこのようなまとめに至ったのは,授業の前半において事実や証拠をとらえる場面の設定に加え,流れる水のはたらきで三角州ができた話をしたことで,学んだ流れる水のはたらきを三日月湖の場合にも適用させて考えることができたからだと考える。 グループ交流の後,自然にできたと考えた班が5グループ,自然にできないと考えた班が3グループだった。そこで,お互いの説明を聞いた。意見を聞くことで,自然にできたという意見に変える子どもが現れた。その子どもにどうして意見を変えたのかを聞くと,「けずるとたまるが繰り返されるということで,川(のカーブしている部分)がどんどんズレていくというのは分かるから」と発言した。意見を変えたこの子どもは,自分とは違うグループの説明を聞くことで,学んだ流れる水による侵食・堆積作用と三日月のでき方を関連付けることができたからだと考える。そこで,指導者が「侵食によって,川のカーブがどんどん外側の方へズレることはありえるかな」と思考を整理する問いかけをすると,子どもらの多くがうなづいていた。本時の学習を踏まえ分かったことを整理させると,三日月湖は流れる水の削ったり積もったりする働きによって川の形が変わったことで自然にできる湖であるということをまとめた。このことから,これまでの学習で学んだ科学的な性質やきまり等を適用させ科学的な思考力・判断力・表現力等を広げることができたと考えられる。 小学校 理科教育 17 第4節 論述確認テストの作成と活用 単元の最後に,学んだことを適用する視点と,科学的な思考力・判断力・表現力等が育成されたかを見取るため,論述確認テストを作成し,実践を行った。このテストはそれぞれの学習の単元末に行うことで,単元で獲得したい知識の習得ができたか見取ることができる。加えて,単元を通じて獲得した科学的な性質やきまり等が新たな状況下で適用できるかを見取ると同時に,科学的な根拠に基づいて思考・判断し,表現する力が身に付いてきているかを見取ることもできる。一方で,子どもに力がついているかを測るということは,指導者による指導が効果的であったかどうかを見取ることもできる。論述確認テストをすることで子どもの科学的な思考力・判断力・表現力等を見取ると同時に,指導者の指導の在り方を見直し,次に活かすといったねらいで実践した。 評価規準は2章を参考にしながら行うが,「概ね満足」の中に「事実や証拠に基づいた表現」と事実や証拠は不明瞭だが,学習で学んだ科学的な性質やきまり等が記述できている「事実や証拠が不明瞭な表現」を位置づける。「努力を要する」には「十分満足」や「概ね満足」の基準以外の記述である「その他」や主張のみの記述である「無解答」,そして主張が問題に正対していない「誤答」を位置づけて実践した。 (1)第4学年「わたしたちの体と運動」 <論述確認テスト作成に向けて> 子どもたちは,授業において人のうでが曲げ伸ばしできる仕組みについて骨や関節,筋肉を関係づけながら学習してきた。そこで人の足首を曲げ伸ばしして足のつま先を上げたり下げたりする仕組みについて,腕で学んだことを適用させることができるかを見取るようにした。足のつま先を上げている様子の図を選んで主張とする際に,問題にある図の筋肉の縮んでいる様子や緩んでいる様子を事実や証拠として示し,選んだ図の筋肉の様子がどうして足のつま先を上げることにつながるかを理由として記述できるかを見取るようにした。このようにして作成した論述確認テストを次頁図3-11に示す。 <論述確認テストの結果> ①の問題に対する正答率は,97%であった。このことから,子どもらは関節という言葉の意味につ 163

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