書き方例 図3-7 動物園で用いるワークシートの記述の仕方 学習問題を設定し,写真をヒントにしながら予想を立て,観察の見通しを立てる所までを行った。この「人と比べて」という学習問題にしたことにより,人で学んだ動きと体のつくりの関係について想起させ比較するといったねらいがある。 次に,見通しをもった状態で,実際に動物園に行き,キリン,チンパンジー,フサオマキザル,フラミンゴの中から2種類の動物と,展示室にある先述した4種の動物の骨格標本を見て確かめる時間を設定した。図3-8にこの時の子どもらのワークシートの記録を示す。 点線で囲んだ子どもの記述を見ると,最初の子どもはキリンを観察した際,「(首が)曲がる」ことを発見し,首には「関節がある」と記入している。そして,関節があると思った理由を「関節がないと(首が)回せない」と記述している。ここからは人の体の仕組みや運動で学んだことを活かして記述している様子が伺える。次のゴリラを観察しだから, (観察結果 → 主張(考えたこと)→ 理 由 ) 曲がって 関節が 骨は分かれいな いた あると考える いと曲げられない 大きな筋肉 体を支える 人は・・ 動いていた ためにあると考える なぜかというと, 図3-9 動物園での学習の振返り 小学校 理科教育 15 た子どもは,「うでが曲げられる」という観察した事実から「関節がある」と考え,「骨は分かれていないと曲げられないから」と,学んだことを活用している様子が伺える。最後の子どもは「しっぽがめっちゃ動いている」という事実を発見し,「関節があると考えた」と自分の考えとなる主張を書いている。さらに,なぜそう思ったのかを「骨は分かれていないと曲げられないから」と関節の学習を通して学んだことを活用して記述している。加えて,「(キリンの)太ももに大きな筋肉が動いていた」という観察事実から,「体を支えるためにあると考えた」と考えた理由を「太ももに筋肉がないと立てないから」と書いている。このことは,第5時における,人の全身の筋肉について調べる学習において,「人の太ももの筋肉が大きいのは,体を支えるため」と学んだことを関連させたと考えられる。このようにワークシートの書き方を例示したことにより,観察の視点も焦点化され,事実や証拠をとらえて,主張に理由を加えて表現できるようになったと考えられる。さらに,学習問題を「人と比べて」としたことにより,理由に当たる部分に,人の体で学んだきまりや性質を適用して記述できたと考える。 動物園での学習の後半は,観察した結果や考えたことをもとに,学年で報告会を行った。自分が観察することができなかった動物の様子や体のつくりを聞くことで,体の動く仕組みは人と共通して骨や関節,筋肉のはたらきによることに気付くことができた。その上で,「違いは何かな?」と問いかけた。ここでは,交流する時間が限られていたため,動物園の飼育員に講義をしてもらい,動物が生活に合わせて体のつくりを変えていることを話して頂いた。子どもらは,改めて動物の体のつくりや仕組みを調べることにより,その違いに気づき,その違いは生活する上で必要な変化ということに気づいた。この時の,子どもの授業を受けた振返りを図3-9に示す。 161 図3-8 動物を観察したときの児童のワークシート
元のページ ../index.html#17