図3-5 ロケットが飛んだ原因を表現した児童のワークシート 基に表現している。さらに,結果から主張に至った理由を「空気を温めると体積が大きくなるから」と目で見ることができないない空気に対し実体的な見方を働かせて思考している様子が伺える。このことは,空気の体積の変化を石鹸膜を使って視覚化したことによる成果であると考えられる。 個人で考えをワークシートに整理した後の全体交流では,現時点でフラスコ栓が飛んだ理由として,試験管の中の空気を温めると,石鹸膜が膨らんだことから,空気がフラスコ栓を飛ばしたと考えられるということを多くの子どもが主張していた。さらに,その理由として,温めると石鹸膜が膨らんだのは空気の体積が大きくなったと言えると理由付けしていた。その後,水を入れなくてもフラスコ栓が飛ぶ様子を観察し,確認してまとめた。このような科学的な事実や証拠に基づいた発言に至った要因には,ワークシートの活用により考えを構築し,それを表現することができたからだと考えられる。 (4)第5学年「植物の実や種子のでき方」におけ小学校 理科教育 13 より深めることができると考えた。結果を基に考えていく場面では,事実や証拠,理由,主張の関係図を拡大提示したり,ワークシート用いたりすることによって,考えることができるようにした。第5学年という発達段階を踏まえ,ワークシートには関係図は示さずに授業の流れに沿う普段のノートの構成に近い形でワークシートを作成し手立てとした。なぜなら,第6学年に向けて,関係図を使わずとも自ら思考・判断したことを,表現していけるようにするためである。 <授業の実際と子どもの様子> 授業では,「アサガオの実や種子ができるために,受粉は必要だろうか。」という学習問題のもと問題解決の学習活動を行った。結果が明らかとなった10個の比較対照実験について取り上げ,受粉させたことで結実したアサガオが8/10つ,受粉させないため結実しなかったアサガオが0/10つと全体で共有した。この結果を基に,一人一人ワークシートを用いて考察した。このとき,拡大提示で関係図を示しながら,事実や証拠に当たる部分は表を言葉で書き表したもの,主張は学習問題に対する結果を踏まえた自分の考え,理由は結果のどこを見たから自分の考えが言えるのかということを整理した上で,書くように指示した。その時の,考察で用いたワークシートを図3-6に示す。 図3-6 受粉と結実の関係を考察したときのワークシート この図を見ると結果の欄には表の下に結果を言葉で書き表したものを,考察の欄には自分の考えである主張と,その主張に至る理由を書くことができている。事実や証拠,理由,主張の関係を整理したことにより,図3-6のようなワークシートの形式でも記述することができたと考える。 一人一人が結実と受粉の関係性について考察した後,グループで話し合う場を設定し,意見をま159 る実践~考察の場面~ <学習のねらいや手立て> この単元では「アサガオは受粉することで実や種子ができるか調べる」学習において実験結果に基づいて思考・判断し,表現することができるように考えた。この学習では,アサガオの結実について受粉させたアサガオと受粉させないアサガオの比較対照実験を行い受粉との関係を調べていく中で,結実には受粉が必要ということを理解する。しかし,実際には受粉させたアサガオであっても結実しないこともある。本時では敢えて結実しない結果も示すことで,結果を事実や証拠ととらえさせ,主張していく際に加える理由付けとして複数あるデータの中からどこに着目したから主張が成立するのかを意識して授業構築した。加えて,本学級では植物の発芽について調べる学習において,発芽条件を満たしていても,必ず発芽するわけではないことを学習している。そのことも踏まえ植物の結実と受粉の関係について考えていくことで,植物の命をつなぐ仕組みについての理解を
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