001総教C030705H30西村最終稿
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することにつながったと考える。 (2)第5学年「流れる水のはたらき」における実 実や証拠を明確にすることは容易ではないため,子どもたちが単元導入時に想像して描いた手の骨のつくりの予想図を活用することとした。 <授業の実際と子どもの様子> 授業では,子どもが考えた予想図を複数提示した。提示した予想図を図3-2に示す。 図3-2 子どもの予想図 提示後,指導者が「予想図の違いは何だろう」 と問いかけた。この問いかけにより子どもは予想図を比較する思考を働かせ「骨と骨が分かれているもの」や「骨が1本でつながっているもの」等という違いに気づいた。その上で,「曲げることのできる私たちの骨のつくりに近い図はどれだろう」と問いかけることで,比較して得られた事実や証拠に基づき,判断する場の設定を行った。さらに,自分が選んだ図が正しいと言えるか,相手に分かるように主 張していく 際に,ガイ ダンスで示 した思考の 仕方や表現 の仕方を想 起させ,さ らに,事実 や証拠,理 由,主張の関係図を提示して考えさせるようにした。図3-3は関係図を提示,説明している様子を示している。これら一連の手立てにより,子どもが予想したときの記述を右上図3-4に示す。 図3-4の記述にあるように,根拠となる事実や証拠を共有したことで,「骨と骨がはなれているから」や「かんせつのところがふくらんでいて」と主張を支える事実や証拠を図の中から見出し,明確に表現することができている。さらに,その事実や証拠に基づき,「かんせつごとにまげることはできない」,「自分の指もかんせつのところがふくらんでいる」と理由を加え主張している記述がある。事実や証拠の明確化,思考過程を視覚化することにより,根拠に基づいて思考・判断し,表現 157 図3-3 考え方や表現を整理している様子 図3-4 根拠に基づいて予想した記述 小学校 理科教育 11 践~予想・仮説の設定場面~ <学習のねらいや手立て> 本単元の「上流と下流の石の様子の違いを調べる学習」において,根拠をもって予想する場面の実践である。この学習は,上流には大きな角ばった石が多いことや下流には小さな丸みのある石が多いことを理解し,そのような違いの原因が流れる水のはたらきによることを理解する学習である。しかし,どうして石の形や大きさが違うのかをいきなり問いかけても,考えるための根拠が不足している。なぜなら,子どもらは石について注目した経験がほとんど無いからである。そこで,石の形や大きさの違いの原因を,石の様子を事実や証拠として考えていく上で,まず同じ川の上流の石と下流の石の実物を用意し比べさせることを手立てとした。そして,とらえた事実や証拠に基づいて思考・判断し,表現していくための手立てとして,事実や証拠,理由,主張に当たる要素を板書に明記することで,視覚的な支援とし根拠に基づいて思考・判断したことを表現することができるようにした。 <授業の実際と子どもの様子> 授業では,最初に同じ川の石だということを伝え,「AとBの石はどこが違うだろう」と問いかけると,子どもたちは石の大きさが違うことやゴツゴツした感じと滑らかな感じという触感の違い,尖っている石と丸みのある石などと比較する思考を働かせ様々な違いをとらえることができた。そこで,「より下流の石はどちらの石だろうか」と問いかけ,学習問題を「より下流の石はAとBのどちらだろうか」と設定した。予想を立てる際,見つけた違いが事実や証拠となること板書で示し,より

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