001総教C030705H30西村最終稿
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156 ・本当に水で土や砂がけずられるのだろうか? ・どのようなときに,水で土や砂がけずられるのだろうか? ・水の流れる量とにごりは関係しているのか? ・なぜ,水が流れているだけなのに,土がけずられているのだろうか? ・本当に,土や砂が流れる水でけずられているの?また,どこの土や砂がけずられているの? ・なぜ,上流と下流で川の大きさ(幅)がちがうの? ・水の流れるスピードや量でけずられ方がちがうのではないか? 小学校 理科教育 10 かけを行うことで,教材や自身,他者との対話を促し,流れる水の働きについての問題意識を醸成することにつながった。 第2節 科学的な論述の向上を目指して <科学的な論述の導入ガイダンス> 本研究を進めるにあたり,子どもたちが自分の考えを主張する際に,どのような思考の仕方やどのような表現がよいかを理解することが重要であると考えた。そのために,その思考を獲得する時間を設定した。この学習でのポイントは,普段の私たちの会話には事実や証拠からなる主張が多いことに気付くことである。自分の考えをより分かってもらうには事実や証拠に理由を加えた表現の仕方が適切であることを理解するために行った。そこで,だれもがイメージしやすい日常場面において主張する場面を例に挙げた。事実や証拠と主張からなる表現と,事実や証拠に理由を加えた主張からなる表現を比較させることで,多くの人に自分の考えが伝わる表現について考えさせた。子どもたちは,「事実だけだと,どうしてそういう主張になったか分かりにくい」や「理由があるとその人の考えがよく分かる」と判断し,事実や証拠に理由を加えて主張した表現の方がより納得できることをとらえることができた。このような時間を設定したことで,根拠に基づいて理由を加え思考の仕方や表現について共有することができた。 (1)第4学年「わたしたちの体と運動」における<学習のねらいや手立て> 本単元は自分の体を題材にしているため子どもにとっては身近な存在である。しかし,予想や仮説を立てる際,体の中まで見えない,見たこともないということから,「何となく」や感覚的に予想してしまうことがある。そこで,「関節のはたらきを調べる」学習の予想を立てる場面において,根拠に基づいて思考・判断し,表現できる予想場面を設定した。この本時は,人が体を動かすことができるのは,骨,筋肉の働きによることを理解していく学習の1つで,体の各部にある関節の存在に気付く学習である。ここでは,全体での交流やワークシート,ガイダンスで示した思考の関係図を拡大提示するなど,子どもたちが事実や証拠に当たる部分を明確にしながら,理由を加えて表現できるようにした。さらに,予想を立てる際に事けることができた。そして,同じ川でも場所が違えば様子が違うということを理解している様子が見られた。そこで,同じ場所の増水時の様子の写真を提示した。すると,子どもらは水のにごりや川幅がさらに広がったということに気づいた。 ウ ゆさぶる問いかけ 授業の展開部分では,指導者が「水が増えただけでにごるのかな」とゆさぶりをかけた。この時,水が100mL入ったビーカーにさらに100mL加えても色は変わらないということを例示することで,子どもたちは川の水が増えただけでは,濁ることはないと意識することができた。そこで,指導者が茶色の濁りの正体は何かな」と全体に問いかけ,再び教材との対話を促した。さらに,濁りの正体と思った理由についても考えるようにしたことで,自身の生活経験や既習内容と事象をつなげる自身との対話を促した。子どもたちは濁りの正体は土や砂だろうと考えた。そして,土や砂が正体だということを「写真を見ると,川の周りには木や石が多いから,川の水が増えたときそれらが混ざるから」や「雨のせいで川の水が増えると川底に沈んでいた土や砂が一気に流されるから」等と考えることができた。本時では,これらの考えを発表し合うことで,他者との対話を設定し思考を広げた。このように他者と対話していく内に,様々な考えが出されることとなった。すると,「本当の理由はどうなのだろうか」や「川の水には地面をけずるような力があるのだろうか」などといった疑問をつぶやき出した。これは,他者との対話により真実を確かめてみたいという気持ちの表れであろう。これらの授業の中で,疑問に思うことを各自で整理する時間を設定した。以下に,子どもが疑問に思ったことの一部を示す。 これらの疑問にあるように,指導者が子どもの実態を見取り,子どもの思考の流れに沿った問い実践~予想・仮説の設定場面~

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