001総教C030705H30中澤最終稿
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用的な力として育成する教育活動でもある」(13)と述べている。つまり,各教科で身に付けた資質・能力を特別活動での実践を通し,生活や社会をよりよくするための汎用的な力へとつながるようにするということである。 「学級わくわく大作戦」においては,学級活動に向かう児童のやる気を維持し高めたりする視点で学級活動とその他の教科等と関連付けた計画を行っていく。例えば,音楽の学習で合奏した曲を集会活動の最後にみんなで演奏したり,運動会で踊った民謡をみんなでもう一度踊たりする。すると,学級活動以外の時間も「学級わくわく大作戦」として繋がっていると感じ,それが児童のやる気を高めることにつながると考える。また,図画工作でつくったカードを,集会活動に招待するための招待状としたり,国語で秋のよさを表した詩を集会活動の際に掲示したりするなども考えられる。さらには,そこで他の教員や保護者などを招いて披露したりするとますますやる気が高まるだろう。また,他教科での学びにも目的意識や相手意識が加わると考える。つまり,音楽で合奏したものを人に聞いてもらうという目的ができたり,図画工作のカードも人に喜んでもらえるような工夫が足されたりするだろう。 また,児童の心身が健康な状態でなければ「わくわく」感を醸成するのは困難だろう。寝不足でイライラした状態からいきなり「わくわく」した状態にするのは難しいと言える。心身の健康のためには,自分自身で生活習慣を見直していく必要があることに児童が気付くことが必要である。これらは,学級活動(2)(3)の学びや体育科保健領域の学習が関連しており,これらの学びが児童の「わくわく」感の醸成を支えていくものとなると考える。また,道徳科の学びも児童の「わくわく」感の醸成を支えるものとなるだろう。相手を思いやることの大切さや,やると決めたことを最後までやり抜くことの大切さなどの道徳科での学びを学級活動で生かすことで,気持ちよく活動に取り組めたり,友達とのトラブルを回避できたりし,「わくわく」感を支えることにつながると考えるためである。反対に,道徳科で学んだことと,学級活動での経験とをつなげることで,教材がぐっと自分に近づき,より効果的な学習が展開できると考えられる。 (2)児童のやる気を維持し高める3つの視点 坂本(14)は,「やる気は『出させる』のではなく,小学校 特別活動 7 『育てる』のである。子ども自身からやる気が出るように条件をととのえる」ものであると述べ,やる気を育てるためには,①子ども一人ひとりが自尊感情が持てるようにすること②子どもが自分で決めて実行し,責任を果たすことのできるよう自主性を尊重すること③教師や親と子どもとの間に温かい人間的ふれあいがあることを挙げている。本研究では,それを3つの視点に整理し,活動の中に取り入れていくこととした。 〈視点1「意思決定や合意形成の場をつくる」〉 児童が自分で決める意思決定の場や,学級みんなで話し合って決める合意形成の場を意図的に活動に取り入れていくことである。自分でもしくは自分たちで決める自由があるということは,3つの視点の中でも最も児童のやる気に直結すると考えるので重視していきたい視点である。しかしながら,教員は常に児童の様子を予測して計画し指導していくことがより重要であることは言うまでもないことである。そこで,児童の実態を把握し,どのような場面で児童の決定に委ねていくことが有効かをあらかじめ計画しておくことが必要だと考える。 〈視点2「自己存在感や自己有用感を得られる場をつくる」〉 学級で自分が必要とされ,存在価値があると感じることが児童のやる気の向上につながり,そのような場を意図的に設定することが自己存在感や自己有用感の高まりにもつながると考える。「がんばったことみつけ」などを活動の中に入れていくことや,集会活動の内容自体にそれぞれの個性を生かすことができる工夫等を取り入れていくなどである。 〈視点3「共感的な関わりをする」〉 自分のがんばりを教員に認めてもらうということは児童のやる気につながる。そのため,教員が児童の活動に対し自分事のように喜ぶ姿を見せたり,児童と一緒に心から活動を楽しむ姿を見せたりするなど工夫し,意識的に共感的な関わりをしていくことで効果が上がると考える。 第2節 「学級わくわく大作戦」の指導の流れ 「学級わくわく大作戦」は以下のような指導の流れで実践していく。 ①児童の活動前 ・児童の実態把握 ・目標設定と計画 43

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