図1-1 1年次の取組 図1-1のように,学級目標達成をめざし,児童自身が現状を見つめ(S),課題を発見し(T),解決に向けて計画し(P),実践する(D)という児童による話合いを中心としたSTPDサイクルを活用した一連の活動を行った。具体的には,学級目標を達成させるために,何が課題で,解決のために何を 第1節 1年次の研究の成果と課題 はじめに 第1章 児童相互のつながりを大切にした 学級集団づくりを目指して 「わくわく」この気持ちは,子どもにとっても大人にとってもプラスの影響を及ぼす。新しいことにチャレンジする気持ちが湧いてきたり,やる気が出て仕事や学習に対する集中力が増したりする。また,他の人にやさしく接することができたり,全身から力が湧いてきて,よい健康状態を保ったりすることにもつながるだろう。これらは,何か楽しみなことがあって,その期待感で,思考がプラスになった結果起きたことだろう。宿泊行事前,遠足前の児童の様子は,まさにこの「わくわく」感からくるものだろう。学級の雰囲気が明るくなり,児童がみんな生き生きしているのを感じることはないだろうか。 2年次では,このような「わくわく感」を学級で共有することで,児童同士のつながりを強くしたり,学級全体をやる気に満ちた集団にしたりして,より一層子どもの主体性や社会性を育みたいと考える。 1年次の研究では,学級目標を達成させるという課題解決に児童が取り組む過程で,「主体性」や「社会性」が育まれていくと考え,実践を行った。図1-1は,1年次の主な取組を表したものである。 小学校 特別活動 1 していけばよいのかについての話合い活動を行い,話し合ったことを「集会活動」や「係活動」で実践するという学級活動(1)の学習過程を利用し,実践していった。そして,それらの活動を児童の自治的なものにしていくことで,児童が相互につながり合う学級へと高まり,その過程で主体性や社会性が育まれていくと仮説を立て,実践検証を行った。 活動の最初は,主体的に参加する児童とそうでない児童に分かれた。しかし,児童同士の話合いを通して課題を見つけることができるようになると,話合いが深まり,決まったことを主体的に実践する姿が見られた。また,一連の活動の中で,児童がそれぞれの思いを伝え合い,納得のいくまで話し合う経験をすることで,相互理解が深まり,相手の気持ちを考えて行動する姿が見られるようになった。このような変化の要因として,2つあげられると考える。1つ目は,話合い活動における教員の関わりの変化である。2つ目は,取り組んだ課題が児童にとって取り組みたいという意欲のわくものになったということである。前者は,話合い活動中における教員の助言の回数の変化である。児童が活動に慣れてきて,徐々に児童による進行が可能になってきたこともあるが,意図的に助言を減らしたことで,自分たちの力でやり遂げたいという児童の意欲を掻き立てたと考えられる。後者は,前者の延長上にあるものだが,児童自身で課題を見つけることができた結果,それが共有され,協力して課題を克服していきたいものになったということである。 その他の取組の成果としては,話合い活動等を進行する計画委員や係活動のリーダーを輪番制で行う取組中での児童の変容が挙げられる。これは,リーダーとそうでない立場の両方の立場を経験することで,お互いの思いを理解することができると考え行った取組である。実践を行うと,リーダーとして,話合いを進めていく大変さに気付き,リーダーではない立場になった際に,協力していこうとする姿が見られるようになった。しかし,それ以上にリーダー経験が多数ある児童と経験の少ない児童が,いつもとは違う立場を経験することで,それぞれの新たな一面を発見することができたり,個々の活躍の場が広がったりした。それにより,「自分は役に立っている」や「自分にもできる」といった感情が湧いてきて,自尊感情の高まりにつながったと考えられる。それが児童の意欲につながり,主体的に取り組む要因となったの37
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