001総教C030705H30中澤最終稿
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60 間であったと考える。 さらに,学級活動とその他の学習を関連付けたことが効果的であったかどうかであるが,学級活動や関連付けた教科・領域で児童の学びに深まりがあったと考えられる。前述のように保健の学習と学級活動(2)を関連付けることで,児童はより生活習慣改善を意識することができた。また,道徳科の学びが学級活動(1)に生きたり,学級活動(1)の経験が児童の共通の経験として道徳科の学習の中で生かされたりした。 「学級わくわく大作戦」は,短期間の取組として行っていたが,学級目標実現に向け,学級活動とその他の教科等をより効果的に関連付け,1年間見通した集団づくりの計画を立てて行うことで,より効果が上がると考える。特に道徳科や総合的な学習の時間は集団づくりに関わる部分が大きいので,これらをうまく活用していくことが有効だと考える。 (2)3つの視点を取り入れることを通して 本研究では,児童のやる気を維持し,高めるために3つの視点を取り入れた。実際に取り入れたことで,児童のやる気につながる場面がたくさんあった。さらに,一つ一つの視点から新たな成果も出てきたのでそれぞれの視点ごとに述べていく。 ・意思決定,合意形成の場をつくる 児童が自分ないし自分たちで決める自由があることが児童のやる気につながったと感じた。そのような場を増やすことでより自治的な活動となり,それが児童同士のつながりを強めることになったと考える。しかし,同時に児童が自由に決定できる場を多く取ろうとすればするほど,教員のより細やかな関わりが必要となると感じた。そこで,普段より児童の様子を書きとめていったり,学級アンケートのような客観的な見取りを定期的に行ったりしながら児童理解をしていくことが大切であると感じた。また,合意形成の場は,自分もよくて相手もよい方法を探ることが求められる場であり,相手意識の向上につながったと考える。さらに,決めたことを最後まで責任をもってやり遂げることにもつながったと考える。 ・自己有用感・自己存在感を得られる場をつくる このような場を意識して取り入れたことで,児童の自己有用感や自己存在感の高まりが見られた。第3章の各校の学級に対するアンケートの結果からも見取れる。これらが児童の自信となり,ますます活動のやる気につながったと感じた。 小学校 特別活動 24 ・共感的な関わりをする 教員が共感的に関わっていくことで,児童のやる気につながったことはもちろんであるが,教員の姿を見て,児童同士にも共感的な人間関係が育まれ,親和性高まる学級集団となったと感じた。集会活動で,教員が心から楽しむ姿や本気で悔しがる姿から共感的な関わりを児童が感じ取り,それが児童同士へと広がっていったためと考えられる。また,共感的な人間関係が構築されたことにより,学級に親和的な雰囲気が醸成されたと感じた。 教育活動の中でこれらの視点を意識せずに取り入れることができている教員は多いと考える。しかし,意識しながら活動に取り組むことで,個々の教育活動が集団づくりとしても意味を持つものとなり,つながりが出てくると感じた。これらの視点は学級集団づくりにおいて有効な視点だったと考える。 おわりに 本実践の様々な場面で子どもたちが「わくわく」しながら活動を行っていた様子が見られた。その姿はまさにやる気に満ちあふれていると感じた。しかし,筆者がこの実践を突然これらの学級で行ったとしていても,きっとうまくはいかなかったと考える。では,実践の中でなぜこのように児童の「わくわく」する姿をたくさん見つけることができたのだろうか。それは研究協力員の方々が学級の実態を正確に把握し,それぞれの子どものことをしっかりと理解しておられたからだろう。「学級わくわく大作戦」の根幹は教員の児童理解である。一人一人の子どもたちの様子をしっかり理解することが,素敵な子どもたちの笑顔があふれる学級に,互いの親和性が高まった学級経営へとつなげることができるのではと考える。 児童が満面の笑みを浮かべて,一生懸命活動に取り組む姿を見て,わくわくしていたのは研究協力員の方々でもあった。「学級わくわく大作戦」は,児童だけではなく教員のわくわく感を醸成するものであると感じた。 最後に,本研究の趣旨を理解し,協力して下さった京都市立勧修小学校と京都市立仁和小学校の校長先生をはじめ,自らの学級での姿を調査対象として協力して下さった研究協力員の先生方,いつも温かく迎えて下さった両小学校の教職員の皆様に心から感謝の意を表したい。

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