001総教C030705H30河合最終稿
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128 なる合意形成に重きを置く。すでに知り合った者同士の楽しいお喋りのこと。他人にとって有益な情報はほとんどない。 ミュニケーションの往復に重点を置く。他人と交わす新たな情報交換や交流のこと。 体的な学び,対話的な学び,深い学びは不可分なものであるが,対話的な学びの対話については,主体的な学びや深い学びを生み出す手段としての側面をもっているのではないかと考える。国語科においては,すでに対話的な学びは多く実践されてきており,授業中にペアや班交流で話し合う場面があったり,様々な形での全体交流の場面があったりすることは珍しくない。しかし,その対話が生徒の主体的な学びや深い学びとつながっておらず,形だけの対話となっていることもあるのではないだろうか。形だけの対話という時点で,対話ではなく,ただの会話である。平田は,会話と対話の違いを以下のようにまとめている(3)。 会話:お互いの細かい事情や来歴を知った者同士のさら 対話:異なる価値観のすり合わせ,差異から出発したコ 教室は多様な人間が集まった空間であり,だか らこそ,教室で学ぶ意味がある。異なる価値観をもった生徒たちが,同じ目的意識をもって話をするからこそ,新たな価値観や考え方が生み出される。会話は,他人にとって有益な情報はほとんどないとされているが,授業という視点から考えると,情報がないというよりも有益なものを生み出させないという方が適当かもしれない。そのように考えると,対話を成立させるためには,まず他者と対話をする目的が不可欠であると言える。他者と対話をする目的について考えると,各単元,授業の目標を達成するために必要だからである。各授業には,目標を達成するための課題があり,課題を解決することが対話をする目的ということになるだろう。 では,どのような課題が設定されればよいのだろうか。対話は「異なる価値観のすり合わせ」であることを考えると,多様な価値観が反映され得る課題であることが条件であると言える。これは,教室の中にある多様な生徒の考えを引き出すためにも不可欠な条件である。同じような答えが想定される課題では,いかに多様な生徒たちが存在しようと,そこに価値観のずれは生じない。つまり,対話自体が成り立たないということである。ただし,生徒一人一人が自分の価値観を反映するだけの答えであれば,国語の授業の中で導き出す答えとしてふさわしくないだろう。自分の答えに,ど中学校 国語科教育 4 れだけ客観的な根拠を基にした意味づけができるかということが国語科において重要である。つまり,様々な客観的根拠が収集可能であり,一人一人の生徒の価値観を反映できる多様な意味づけも可能な答えが導き出せること。これが,仲間との対話を有意義なものとするために必要な課題であると考えた。 (2)対話の進め方と形について 前項で述べたようなことを意識して課題が設定されても,生徒が話し合いなど仲間と対話をすること自体に課題を抱えている場合もある。有意義な仲間との対話とするためには,生徒に,相手に分かるように伝えることと,相手の考えを受け取ろうとすることの両方を意識させる必要がある。しかし,ただ漠然とそのような意識をもつよう生徒に伝えるだけでは,どうしたらよいか分からない生徒も多いだろう。そこで,具体的な姿を示すことが有効であると考えた。 次頁右表2-1は,生徒に示す対話の進め方である。自分が話をするとき,相手の話を聞くとき,話をまとめるときに分けて示している。このような対話の方法は,何も中学校で初めて知ることではなく,むしろ中学校以上に小学校で学習してきている内容でもある。すでに基盤は作られており,生徒の実態に応じて,扱い方の強弱は変えていくことになるだろうが,改めて確認しておくことで,「伝える・受け取る」ということを意識でき,より有意義な対話となるのではないかと考えている。 このような対話を進める方法についての確認に 加え,学習のどの場面でどのような形の対話を取り入れるかということも重要である。仲間との対話には,ペアや班などグループに分かれて対話をする場面と学級全体で対話をする場面があり,協議形式なのか議論形式なのかなど様々な形も存在する。また,グループと言っても,同じ価値観,異なる価値観の生徒など意図的に構成されている場合や生活班をそのまま学習班とする場合など,様々な構成が考えられる。今回の実践では,特に議論するという対話に注目し,対話の最終段階において討論を取り入れた。今回の実践で取り入れる討論は,聴衆を説得するという形はとるが,説得すること自体が目標ではなく,自分の中で様々な価値観をすり合わせながら,自分の考えを形成していくことを目指している。自分の中で様々な価値観をすり合わせる中で,自分との対話も生ま れるだろう。さらに,討論に向けての仲間との対

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