001総教C030705H30河合最終稿
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図の左側が主に昨年度の研究,右側が今年度のSeito 研究である。今年度焦点を当てた,目標対して自 分の学びがどうであったかという自己評価については,教師は基準をもって見ていく必要があり,教師が見取ったことを生徒に返していくことも重要であると考える。ここで言う「返す」とは,生徒の自己評価を直接的に修正していくということではなく,授業中の支援としての声かけや指導改善を通して,生徒に返すということである。今年度,生徒の自己評価の在り方を考えていくにあたって,以下の二点を中心に考えた。 第2章 自己評価として機能するために 第1節 仲間との対話を取り入れた授業作り ①学んだことの確認をする。 ②自分の中で解決できていないことをする。 この二点は,表1-1で示した一時間ごとの自己評価に関わる部分であり,一時間ごとの自己評価から単元の自己評価についても考察していきたいと考えた。一時間ごとの自己評価に関しては,一時間で完結する場合と,一時間ごとの評価をつなげ,単元最後の自己評価に結び付けていく必要が生じるものとがある。そのような違いに応じて,一時間ごとに記述があった方がよいこともあれば,簡単に数値のみで評価をさせたり,記述もより簡潔なもとしたりすることも考えられるだろう。重要なのは,目標のない授業がないように,目標に対する自己評価が不必要な授業もないということである。教師が,何のために,どのような自己評価を用いるのか考えることが,振り返りを形骸化させないために不可欠なことである。 では,どのような単元で,どのような一時間ごとの自己評価を行うことが望ましいのだろうか。例えば,本研究において,単元の最後に自己評価をする大きな目的は,生徒自身が自分の考えの変容を実感することである。数時間をかけて,このような学びの自覚を目指す場合には,一時間ごとの自己評価もある程度の記述がある方が望ましいと考える。生徒によって,いつ,どのように自覚するのかには差異があることに加え,第1時から 最後までの間には一定の時間が経過しており,最 中学校 国語科教育 3 ごとの学びが単元としてつながったときに見えてくるものがあり,評価も点と点を結んでいくことで可能になることが多い。したがって,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の三領域の指導,かつ数時間にわたって指導が継続される単元において,より細やかな一時間ごとの自己評価が必要とされるのではないかと考える。また,これら三つの領域は,常に関わり合い,それぞれが活用される中で力も身に付いていくことを考えると,年間を通した自己評価の際にも,同じ領域同士のつながりだけでなく,「読むこと」から「書くこと」へなど領域をこえた学習のつながりも見えてくるのではないかと考えた。 (1) 文部科学省『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援 生徒自ら学びを自覚するためには,学習後の振 り返りの場面だけが重要なのではない。振り返りの場面に至るまでの学習活動がどのように行われたのかということが重要である。特に,仲間との対話が効果的に取り入れられているかどうかが肝要であり,効果的な対話とするためには課題設定が重要であると考えた。ここで言う仲間とは,同 じ学級で共に学ぶ生徒同士のことを指している。 (1)課題設定について 中央教育審議会答申において,育成すべき 資質・能力の三つの柱が示され,それらの資質・ 能力を育成するために「主体的・対話的で深い学び」が不可欠であることも明示されている(2)。主 後にあらためて自分の評価を見つめ直すためには記述あった方がよいと考えるからである。そのように考えると,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の三領域は〔思考力・判断力・表現力等〕に関わる領域であり,一時間 127 図1-1 研究の構想 個人内評価 生徒の学びを把握 個々応じて 認める 教師の評価 生徒 自己評価 学びの自覚 意欲向上 支援として 返す 目標に準拠した評価 生徒の学びを把握 授業づくり・指導改善 学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)中教審第197号』2016.12.21 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf 2019.3.1 p130

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