(1)自己評価の目的 何のために,何を,どのように振り返れば自己評価として機能するのか考えていくと述べたが,まず「何のために」自己評価を行うのか考えたい。一言で自己評価と言っても,様々な捉え方があるが,捉え方の一つに期間や時期があるのではないかと考える。特に,教科の授業として考える際には,期間が重要なのではないかと考える。授業は,一時間,単元,学期,年間などある一定の期間で区切ることができるが,自己評価は期間の単位に今年度昨年度126 あっても自己評価を繰り返す中で,自分で自分を見る目も鍛えられていくのではないかと考える。昨年度の実践は,単元学習において,生徒自身が学びの過程を振り返りながら,自分の最初の考えと最後の考えを比較し,変容を実感することを目指した。また,教師が生徒自身の学びの自覚を認めることで,生徒はより自分の成長を実感でき,次も考えようとする意欲へとつながっていくのではないかと考えた。 一方で,目標に対してどうだったか自分で判断するという自己評価も重要である。従来から言われている「めあてと振り返り」の振り返りも,目標に対してどうであったか自己評価するという側面に焦点を当てたものだろう。「めあて」とは,教師が生徒に提示し,生徒自身が意識しながら授業に取り組んでいけるようにするものであり,その「めあて」に対しての自己評価とは,本来生徒自身が自分で基準を決めて,「めあて」に対してどうだったか判断するものである。しかし,このような自己評価は生徒個々によってばらつきが生じやすく,的確に行うことは難しい。生徒が的確な自己評価を少しでもできるように,教師が視点を与えることが必要であると考えた。また,「めあて」には,教師の「ねらい」が含まれていることを考えると,授業という枠組みの中においては,教師の基準(外的基準)から判断したことを生徒に返すことによって,生徒自身に自分の自己評価がどうなのか見つめ直す機会を与え,学びの自覚もより確かなものとしていけるのではないかと考えた。そこで,今年度は,目標に対する生徒の自己評価に焦点を当てることで,より生徒の学びの自覚を促すとともに,生徒の自己評価を授業づくり,指導改善に生かしていけるのではないかと考えた。 第2節 研究の構想-目標に対する自己評価を中心に- よってその役割が少しずつ異なるのではないかと考える。そこで,各時間の自己評価,単元学習終了後の自己評価,一年間の学習を終えての自己評価の三つに分けて,それぞれの目的について整理する。 まず,各時間の自己評価について考える。一時間の授業を終えた後に自己評価をする際には,その時間で自分は何を学んだかという学習の内容を確認することが重要である。学習内容を確認する中で,自分が得たことや課題として残ったことが意識される。次に,各単元の自己評価については,各時間の自己評価を踏まえ,目標にどれだけ近づけたか,それはなぜかといったことを考えることが重要だろう。さらに,一時間の授業では見取りづらい教材を通して何を学び,自分にどのような変化があったかということについて考えることも可能である。これは,自分の成長を実感することであり,昨年度の実践とも重なる部分である。そして,年間を通しての自己評価は,各時間,各単元の学習を俯瞰し,それぞれの学習のつながりを見い出し,一年間で何を学んだのか考える時間である。自分の一年間の学びの軌跡を振り返るという自己評価としていくことが肝要だろう。 表1-1は,それぞれの自己評価の目的をまとめたものである。 表1-1 自己評価の目的 Seito 1時間 昨年度は,表の点線で囲った部分に焦点を当てて実践を進めた。今年度は太枠で囲った部分(一時間ごとの自己評価と単元のごとの自己評価)に焦点を当てることで,目標に対する自己評価の在り方について考えることとした。 (2)研究の構想 次頁図1-1は,昨年度と今年度の研究について示した構想図である。 単元 年間 中学校 国語科教育 2 ①自分の学習内容を確認する。 ②1時間の中での成果と課題を確認する。 ①目標に対して,どれだけ近づけたか考える。 ②単元での学習を振り返りながら,最初の考えと最後の考えを比較し,自分の伸長を自覚する。 ①これまでの学習をつなげて,自分はどのように学んできたのか考える。 ②1年間の学習において,自分がもっとも学んだと思うことを考え,伸長を自覚する。
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