(前略)特に,学習を振り返る際,子供自身が自分の学 びや変容を見取り自分の学びを自覚することができ,説 明したり評価したりすることができるようになることが ことが重要である。 (下線は筆者) 中学校 国語科教育 1 学習を振り返る際,自分の学びについて説明し たり,評価したりすることができることの重要性が説かれている。学校,あるいは授業においての振り返りは,自己評価の機能を有していることで有意義なものになると考えられる。振り返りを行うことの必要性は,これまでも言われてきていることではあるが,実際に生徒の自己評価として機能していることは決して多くはないのではないだろうか。筆者もそうであったように,形だけの振り返りになってしまったり,時間の確保ができないという理由で省いてしまったりすることもあるのではないだろうか。形だけの振り返りだと,わざわざ貴重な授業時間を割いてまで行う気になれないのは当然だろう。振り返りの意義を見出せないことが,振り返りの形骸化にもつながるのではないかと考える。そこで,振り返りの場面において,何のために,何を,どのように振り返れば自己評価として機能するのか考えていくことで,自己評価の在り方が見えてくるのではないかと考えた。自分の学びについて振り返る中で,自分の学びを見取り評価できれば,次も考えたい,次はこう考えてみようという思いにつながるのではないかと考えている。 (2)自己評価の二つの側面 自己評価として機能する振り返りの在り方について明らかにしていくと述べたが,教科に関する自己評価とはどのようなものなのだろうか。様々な捉え方ができるかと思うが,今回,個人内評価と目標に対する評価という二つの視点から考えていくことができるのではないかと考えた。個人内評価は,個々の生徒がもつよさや個性,頑張りや伸長を認めていくものである。このような個人内評価は,教師が行うものであるが,生徒自身が自分はどのように,どのくらい頑張ったかということを評価していくことも大切である。そして,生徒自身が単元,学期,年間など一定の期間の学習を経て,自分の学びがどのように変容にしたか振り返り,成長を実感していくことも自己評価の一つであると考えている。このとき生徒はあくまで自分の主観によって評価をすることになるが,生徒自身が振り返り,自分の成長を実感することは次に向けての意欲につながる。そして,そのような生徒の主観による評価には,生徒個々のよさや感性等も含まれており,教師は生徒の自己評価から生徒の状況を把握し,個々の学びを認めていくことが重要である。また,あくまで生徒の主観で 125 昨年度は,生徒自ら考えよう,伝えたいと思えるような授業をつくり,授業を通して生徒自身が学んだという自覚を得ることができれば,次も自分の言葉で考えよう,次はこう伝えたいという学びへ向かう力も養われるのではないかという仮説のもと,研究を進めた。生徒自身が学びの自覚を得るためには,授業の中で自分が考えたことや自分以外の考えを目に見える形で残していく必要があると考えた。そこで,書くという表出方法に着目し,最初の考え,過程での考え,授業を通して得たこと,最後の考え,振り返りと場面ごとに書き残していくことを授業の柱とした。学びの自覚とは,変わった,明確になった,広がり深まったと実感できることであり,このような変容を求めるときには,他者との対話が欠かせない。しかし,多くの場合,他者との対話は話すことを通して行われ,そのときの考えはその場限りで消えてしまう。後から振り返ったときに学びの自覚を得るためには,話したことも含め言葉として自分の考えを書き残していくことが有効なのではないかと考えた。昨年度の実践の中で,書き残していくということは,学びの自覚のためだけでなく,言葉を吟味し,考えを練り直していくことにもつながるとあらためて感じた。そして,このような実践における振り返りの場面では,生徒たちが自然とどのように自分の考えが変わったのか,明確になったのか,深まったのかということを記述しており,次はこう読んでみたいといった次の学びへ向かう姿も見られた。今年度は1年次の実践を土台として,より有意義な振り返りについて考えたい。 第1章 生徒の意欲向上と教師の指導改善 につながる振り返りを目指して 第1節 有意義な振り返りとするために (1)自己評価としての振り返り 生徒にとって有意義な振り返りとは,どのようなものだろうか。中央教育審議会答申(以下答申)には,国語科における「主体的な学びの視点」として以下のように示されている(1)。 はじめに
元のページ ../index.html#3