001総教C030705H30河合最終稿
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□平家物語の学習を終えて,初めは敦盛のことを殺すの をやめようと思い,泣き続け出家を強く願った優しい一 面がいいなと思ったけれど,読み進めていくうちに自分 の意志を強くもち,自分の責任を果たした武士としての 一面も読み取ることができて,より直実のことを知るこ とができ面白かったです。 (下線は筆者による) 授業の中で自分の考えに何らかの変化があったことを記しており,自分の変容を自覚していることが分かる。両者の違いは,■の生徒は自分の考えが揺れ,異なる考えをもつようになっているのに対し,□の生徒は根本的な考えは変わらないが,自分の考えに関して新たな発見をしているという点である。このような違いはあっても,異なる見方をしていたり,揺れていたりしているということに違いはなく,両者の記述からは自分の考えやその変容を評価していると言える。また,以下のような記述も見られた。 ●四人を比べたら,現代の社会として考えると敦盛や直 実の方が魅力的だけど,この時代のことを考えたら,義 経と与一の方が魅力的だと思った。だから,そのどちら かを重視するのかによって,どちらが魅力的なのか別れ るのだと今回分かった。 ○戦いの中で,義経たち四人の生き様を知り,魅力を考 えた。もっと古文を読んで歴史を知り,人を知って生き 方などに生かしたい。 (下線は筆者による) ●の生徒は,図4-3で示した生徒0の記述だが, この生徒は,読んだ内容というより視点の変容を自覚し,そのことが学んだという実感につながっている。また,○の生徒も自分が中心的に考えてきた人物以外も含んだ四人の視点から考えられるようになったことで,もっと古文を読みたいという思いにつながっていることが分かる。これらの生徒の記述からは,作品を読む面白さやよさを見い出していることも分かり,単元目標であった作品を味わえたことの証でもあると言えるだろう。多くの生徒がこのような記述をしており,単元の最後に自分の変容を自覚することで,意欲へとつながっていくと考えられる。また,一時間ごとの自己評価シートの項目に「考え度」と「達成度」を設けたが,記述の内容と合わせて数値を見つめ直す機会を教師が与えることで,生徒の自己評価力を高めていくことにもつながるのではないかと考える。 今年度は,目標に対しての自己評価に焦点を当てて研究を進めてきた。そこから,評価の観点「主体的に学習に取り組む態度」との関わりについて見えてきたことを述べる。 まず,現行での評価の観点である「国語への関心・意欲・態度」についての現状を記す。 図4-4 「国語への関心・意欲・態度」を見取る際の課題 個人内評価と観点別評価が別のものであると分 123456どちらの生徒も,「~と思っていたけれど」とここまで単元学習終了後の自己評価シートについて述べてきた。単元ごとに図4-2のような自己141 Nn=70 60%80%評価シートを作成するのは負担が大きいように感じられるかもしれないが,一部文言を変えるだけで使用可能なのではないかと考える。例えば,今回は「登場人物の言動」であったところを「情景描写」と変えたり,説明的文章であれば「段落・構成」と変えたりなど,そのときの指導者のねらいや単元目標に応じて変更することで,作成する負担も軽減されるだろう。今回提案した自己評価シートはあくまで一例ではあるが,一時間ごとの自己評価,単元ごとの自己評価を行い,蓄積していった結果,年間を通した自己評価も有意義なものになるのではないかと考える。 第2節 「主体的に学習に取り組む態度」とのつ図4-4は,観点別評価「国語への関心・意欲・態度」を見取る際,どこに難しさを感じるかという質問に対する本市中学校国語科教員の回答結果である。 1 ノートの記述や授業中の発言など,何を対象として見取るのか。 2 他の観点とどのように区別をして見取るのか。 3 どのような規準・基準で見取るのか。 4 個々の伸びやがんばりと観点別評価や数値的な部分が一致しない。 5 課題はない 6 その他 ながり 「関・意・態」見取りの課題 56% 59% 0%Seito かっていても,二つの不一致に悩む教師が多いこ とが分かる。教師であれば,一人一人の生徒が頑 張っている姿を少しでも評価したいと思うのは当 然のことであり,結果としてどれくらい伸びたか, できるようになったかよりも,その生徒がどう頑 張ったかを大切にしたいと思うものだろう。 中学校 国語科教育 17 4% 4% 40%20%44% 20%

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