001総教C030705H30河合最終稿
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表4-2 2年生「書くこと」における見方・考え方 の生徒たちの「問い」には表2-2で分類した③④の「問い」が多数見られるのに比べ,後者の生徒たちの「問い」には③④の「問い」がほぼ見られないということが浮かび上がってきた。前者の生徒たちは国語が得意で,後者の生徒たちは苦手であるといった事実はないことを考えると,考えようとしたことと「問い」には何らかの関係があるものと考えられる。考えられることの一つとして,「問い」①②でとどまっている生徒は,その次の時間にはすでに答えが得られていることが多く,そこで止まってしまっており,そのことが考えようとする意欲にも関わっているのではないかということである。「問い」を学習の最後に意識させることは,意欲の持続のために重要な働きをすると考える。また,「考え度」と「達成度」を数値化することで,生徒も教師も一生懸命考えたこととどれくらい達成できたということの対比が可能になり,その後の学習に生かしていくこともできるだろう。 また,「問い」については「読むこと」の教材以外でも使用可能なのかということも考える必要がある。今回,読みの過程に従って「問い」を分類したが,そこには国語科の見方・考え方も関わっている。国語科における見方・考え方とは,言葉による見方・考え方であるが,筆者自身が捉えづらい部分もあり,学習指導要領指導内容の文言をもとに整理した(5)。 表4-1は,国語科中学校2年生「読むこと」における見方・考え方をまとめたものである。 表4-1 2年生「読むこと」における見方・考え方 右上表4-2は,2年生「書くこと」における見方・考え方をまとめたものである。 表4-2でまとめたことをもとに,設定・収集・ 内容を検討するための「問い」,構成の検討をする ための「問い」などと考え,分類していくことも可能だが,「読むこと」の「問い」とは性質が異なってくることは否めない。「読むこと」が主にインプットに関わる領域であるのに対し,「書くこと」は主にアウトプットに関わる領域である。「問い」 は,生徒の内側で深化していくような一人一人の 読みをアウトプットするという点において,より 有効であると考える。そのため,「書くこと」などのようにアウトプットに関わる領域については,必ずしも「問い」にこだわる必要はないと考える。また,「書くこと」や「話すこと・聞くこと」は,より実用的な意味が強く,「問い」も実用的かつ技術的なものになるのではないかと考える。これらのことから,「問い」は,「読むこと」の指導において最も効果を発揮すると考えている。 また,毎時間ごとに自己評価シートを作成するとなると負担に感じられるかもしれないが,図4-1のような形であれば,年間を通じて使用可能であり,単元終了後だけでなく,一年間の学びを振り 返る際にも役立つのではないかと考える。 次に,単元学習終了の自己評価について述べる。 単元学習終了後には,目標を意識した視点を教師が文言として与えた上で自己評価をすることが必要なのではないかと考えた。 次頁図4-2は,今回実践した『扇の的』を例として作成した単元学習終了後の自己評価シートである。 表としてまとめた見方・考え方をもとに,把握 をするための「問い」,精査・解釈するための「問 い」,考えを形成するための「問い」として分類した。では,他の領域ではどうだろうか。 単元目標をもとに文言を1,2,3と分けて記述 しているが,読みの過程を意識して作成している。 生徒は自分の基準でどのくらい達成できたか判断 することになるが,例えば「1→2→3」とは,ほぼ 成り得ない。なぜなら,1の根拠として登場人物 の言動が挙げられていないにも関わらず,2の人 物を比較し,生き方について述べることなどでき 139 Seito Seito 中学校 国語科教育 15

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