001総教C030705H30河合最終稿
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138 るのではないかと考えている。国語科という教科は,指導事項としては各領域に分かれていても,実際の授業においては,それぞれの領域で身につけてきた力を活用しながら学習していき,教師もその都度指導していくことになる。今回の授業も「読むこと」の指導であっても,その中には「話すこと・聞くこと」「書くこと」の力も活用しながら磨いていっている。そのように考えると,「読むこと」の授業で見えてきた課題を,次の「読むこと」の指導の際の改善に生かすことはもちろんだが,領域を超えて,学年を超えて指導に生かしていくといった視点も重要なのではないかと考える。 第4章 今後に向けて 第1節 より充実した自己評価を目指して 今回使用した自己評価シートから見えてきたことをもとに,自己評価の形を提案する。 まず,一時間終了後の自己評価の在り方である。毎時間自己評価を行うことに時間を割きたくないという指導者も多いかと思う。それは,これまでの筆者もそうであった。生徒たちが自分で考えたり,話し合い等の学習活動を通して互いに学びを深めていったりする授業を目指せば目指すほど,五十分という時間を目一杯使いたいという気持ちになるからである。しかし,今回研究を進めていく中で一時間一時間の授業における生徒の学びを真に意味あるものとし,生徒の主体性の育成を目指すためには,毎時間の振り返りも生徒自身が行うことが不可欠であると感じられた。また次節で詳述するが,評価の観点である「主体的に学習に取り組む態度については「粘り強さ」や「学習の調整」といった視点が重要になることが示されており,今後,生徒の主体性を見取る際,この二点が大きく関わってくる。このような力を見ようとしたとき毎時間の自己評価が必要になる。加えて,学習を調整しようとする力などは,速効的に身につくものでもなく,毎時間,長期間にわたって自己評価を行うことで,徐々に身についていくものであるとも考える。ただし,前述したように(p3),単元や学習内容によって,一時間ごとの自己評価の項目や方法は多少異なることも留意し,どの単元で,何のために行うのか見極めておく必要があるだろう。より細やかな一時間ごとの自己評価を行う単元として,三領域に関わる単元を挙げ,単元学習後に自己評価をする際にも役立つことを理由としたが,今回中学校 国語科教育 14 の実践で見てきたように一時間一時間の授業ごとに学習を調整していくためにも,毎時間の自己評価が重要な役割を果たすと考える。 図4-1は,今回の実践を経て考えた一時間ごとの自己評価シートである。 「考え度」については,今回5段階で評価をしたが,その結果,「考え度」(数値)の変容と「問い」に関する傾向や考えた内容とのつながりやずれも見えてきた。生徒の中には「3.5」というような記述をしている生徒も複数おり,5段階程度あったほうが,その変容とその他の項目との関係性も見えてくるのではないかと考える。例えば,今回,「考え度」が「上昇していく生徒」「低下していく生徒」「上昇したり低下したりする生徒」「変わらない生徒」の四つに分類したところ,両校とも「上昇していく生徒」「上昇したり低下したりする生徒」が80%弱,「低下していく生徒」「変わらない生徒」が20%強であったが,「問い」の質を見ていくと,前者 まず,学習の確認をするという意味で設定した「今日の授業で考えたこと」という項目についてだが,当初研究の趣旨もあり,自由度の高い項目としたことは述べた。しかし,前章で述べたような授業の課題を見つけられたのは,自由度が高い項目だったからだと考える。目標に沿って,教師側がどのようなことを書Seito けばよいのかもう少し具体的な視点を与えるとい う方法もあるかと思うが,目標を達成できたかどうかは数値で表す形とした。それが,実践では取り入れなかったが案として出している図4-1の一番下の項目である。各時間の最初に目標は提示されているはずであり,教師がその具体を口頭で確認し,数値として評価をさせる形でも目標に対しての自己評価が可能になると考える。この数値と最も考えたことの内容の比較をすることで,そのずれや授業の改善点も見えてくるのではないかと思う。また,達成度を記すことで,「考えたこと」の内容にも,自然と目標に対する記述も含まれるようになっていくのではないかと考える。 図4-1 1時間ごとの自己評価シート

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