001総教C030705H30河合最終稿
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する場合もあれば,各学習班に対してのみ発問する場合もあり,活用するタイミングも重要である。『鍵』の実践において生徒の「問い」を想定することの重要性を述べたが,学級ごとにどのような「問い」が生まれているかを把握することで,その後の授業の進め方にも生かしていくことができ る。表に示した発問は一例であり,そのときの生徒や学級の状況によって異なる部分はあるが,どれだけ「問い」を想定できているかによって,生徒の思考が止まったときに与えられる手がかりの質も異なってくるのではないかと考えている。 〈次の授業に向けて〉 単元学習終了後に回収した自己評価シートから見えることと,どのように指導改善へとつなげていくかということについて述べる。 図3-1は,生徒Fの自己評価シートである。 この生徒の第1時から第3時を見てみると,読んSeito だことから自分の考えを記述しているが,後半の 第4時と第5時の記述を見てみると討論を行う際の 中学校 国語科教育 13 留意点についての記述をしていることが分かる。単元目標に照らし合わせて考えると,後半2時間の記述が目標から外れていることに気付く。「考えたこと」という自由度の高い項目のもと記述していることが原因であるとも考えられるが,この生徒は 第4時と第5時の「考え度」は「5」と評価しており,授業の中で一生懸命考えたことが「メモをする」ことであったり,「話をまとめて反論する」ことであったりしたことは事実である。このような生徒は多々見られ,後半の討論の取り入れ方には,課題があったということである。読みを深めるための「道具」として活用していたはずの討論(「話すこと」)が目的化してしまっていたのである。 生徒たちの様子を見ている中で,今回班での対 話において読みを深めていることが感じられた。特に,第2時は似たような価値観をもった生徒同士での対話,第3時は異なった価値観をもった生徒も入った上での対話であったが,第2時で個々の考えがある程度形成され,第3時でさらに考えを広げたり深めたりする様子が見られた。第3時はグループディスカッションに近い形であり,一年生での「話すこと」の学習を生かしながら読みを深めていくことができたのではないかと考える。今回単元後半の討論の取り入れ方に課題があったのではないかと述べたが,討論を取り入れたのは2年生の後半に「パネルディスカッション」という「話すこと」の教材があり,先を見据えて取り入れたという意図があった。しかし,今回の単元目標を考えると,1年生で学んだことを活用して読みを深めていくという授業展開でよかったのではないかと考える。では,討論を取り入れたことが今後の授業づくりに生かせないかというとそうではない。例えば,今回の授業の中で,聴衆(フロア)の生徒たちがどのように反応するかということによって内容の深まりに大きな差があることが分かった。どのように聞くかということ,聞いて自分で考えたことをどのように発信していくのかという力を身につけることが重要であり,パネルディスカッションにおいてフロアの役割に焦点を当てた授業づくりが有効であると考えられる。フロアの役割は,1年生の「グループ・ディスカッション」では指導していない部分ではあるが,小学校6年生において「学級討論会をしよう」という単元と重なる部分もあり,既習の部分,今回の授業で見えてきた部分を生かしつつ,授業づくりを行っていくことも重要だろう。このように,「読むこと」の授業から見えてきたことを,「話すこと」の授業づくりにも生かしていけ137 図3-1 生徒Fの1時間ごとの自己評価シート

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