001総教C030705H30河合最終稿
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(1)指導計画と課題設定について 中学校 国語科教育 11 標を達成するために,「二人の人物を比較し,どちらがより魅力的か」という課題を設定した。上に立つ立場の人物同士,家来として使える立場の人物同士を比較するという二つのパターンを設定した。二つのパターンを設定することで,同じ時代 に生きる武士に共通する部分,同じ時代,同じ武士であっても異なる部分にも着目できると考えた。この課題が討論のテーマにもなるので,「AかBか」という選択できることも意識した。また,自己評 価の場面を含め,授業の中で自分との対話を生み 出すためには他者(仲間)との対話が不可欠であ り,意義ある他者との対話とするためには課題設定が重要であると述べた。その条件として挙げた「様々な客観的根拠が収集可能であり,一人一人の生徒の価値観を反映できる多様な意味づけも可 能な答えが導き出せること(p4)」にも当てはまる課題だと考える。 また,生徒が自分の考えを書き残していくこと を重視し,最初の考えと最後の考えを比較できるようにするのは昨年度と同様だが,今年度は自分の考えを書き残す際,条件をつけた。昨年度は,「書くこと」ではなく「読むこと」の指導であることを強調し,とにかく自分の考えを条件や形式に縛られることなく,書き出すことを優先したため,あえて無条件にしたが,国語が苦手な生徒にとっては,かえって書き出しにくいという欠点も見えた。そこで,今年度は「どちらが魅力的か」 という課題に対して自分の考えを書く際,次のように条件を提示した。 ①どちらが魅力的だと考えるか,自分の考えを明確に示すこと。 ②なぜそう思うのか書くこと。その際,次のことに気をつけること。 ・根拠となる事実(本文に書いてあること)を明確に示す。 ・その事実からどのようなことが考えられるのか書く。 〈プラスのポイント〉 +事実・根拠が複数ある。 (そこから考えられること,理由づけも複数ある) +反対の立場からの視点も取り入れる。 これらの条件を提示した上で取り組ませることで,自分の考えを書くときだけでなく,自然と対話をするときも,聞いたり話したり考えたりする要点が意識される。実際に条件を意識しながら活135 授業であったように,日常のあらゆるところに鍵があり,それに気付けるかどうかは自分次第であることを感じられるような授業になったのではないかと考える。 第2節 生徒が主体的に学ぶ授業を目指して -『扇の的―「平家物語」から』- 表3-3は,『扇の的―「平家物語」から』の授業計画を示したものである。 直前の『音読を楽しもう 平家物語』において,音読や作品については学習済みである。また,第1時から第4時においても,毎時間最後に自己評価を行っているが,表では省略している。 この授業の目標は,登場人物の生き方や考え方を読みとることを通して,今とは異なる価値観と同時に,今の時代を生きる自分にもつながる価値観を感じ取り,作品を味わうことである。その目表3-3 『扇の的』指導計画 Seito 目標:場面や登場人物の言動に注目して読むことで、登場人物の生き方や考え方を知り,登場人物の価値観と自分の価値観を照らし合わせながら作品を味わう。 ① 『扇の的』と『扇の的』とは異なる『平家物語』の他の場面(平敦盛が源氏方の熊谷次郎直実に討たれる場面)を読んで,A「大将として義経と敦盛のどちらが魅力的か」B「家来として与一と直実のどちらが魅力的か」自分の考えを書く。 ②-1 四種類(義経・敦盛・与一・直実)の学習班(3~4人)に分かれ,担当の人物の魅力についてまとめる。 ※班の数は,学級の人数によって調整する。 ②-2 義経⇔敦盛,与一⇔直実の班で二人ずつ入替わり,相手の魅力を知る。 ③-1 前時に考えた人物,収集した相手方の情報を基に討論の作戦会議をする。 ③-2 義経⇔与一,敦盛⇔直実の班で二人ずつ入替わり,プレ討論をし,意見交換をする。 ③-3 討論に向けて最終確認をする。 ④-1 討論「義経vs敦盛」を行う。 ④-2 討論「与一vs直実」を行う。 ⑤-1 AかBか,テーマをどちらか選び,もう一度どちらが魅力的か自分の考えを書く。 ※どちらも書きたい生徒は書いてよい。 ⑤-2 自己評価・相互評価を行う。

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