把握 → → 精 ②見つけられる人と見つけられない人の差は? 査・解釈形成132 て考えていく形をとっており,A校と比べ,教師が関わる割合が高くなっている。 次に,両校共通の要点について記す。一時間目に疑問を含めた感想を書いた後,「問い」について提示し,自分の疑問がどの「問い」につながりそうか考える。このとき,表2-2で示した「問い」のうち,④の「問い」が良いというわけではないことを伝えるところが共通の要点である。④の「問い」をもったり,その答えを見つけたりするため には,①~③までの「問い」が必要であり,どれ も不可欠なものなのである。ただ,自分に必要な 「問い」と答えは,生徒によって異なる。全部分からない,言葉の意味が分からない生徒は,まず内容の把握が不十分であり,①の「問い」について考える必要があるだろう。結局何が言いたいのか分からない生徒は,②や③の精査・解釈するための「問い」について考える必要がある。では,授業の最初の段階において,内容が把握でき,精査・解釈できている生徒にとって,①~③のような「問い」について考える時間は必要ないのかと言えば,そうではない。自分では把握,精査・解釈できていると思っていても,あらためて言葉にしてみたり,他者と対話したりすることを通して, 自分の解釈を見つめ直し,吟味することにつながる。今,自分が挑んでいる「問い」はどのような意味をもつのか知り,答えていく中で生まれる「問 い」があり,また,その「問い」について考えることを繰り返す中で,自分の考えが深まっていくことを実感できるのではないかと考える。 課題設定についても,両校同じである。目標達成に向けた大きな課題は,「自分が今見つけたい鍵はどのような鍵だろうか」とした。本来であれば, 最初に生徒に提示すべきであるが,一つ目の実践の研究目的もあり,最初に提示はしていない。ただし,生徒に「問い」を意識させ,生徒の「問い」を生かす授業を行う場合,教師がいかに生徒の「問い」を想定しているかということが肝要であると考えた。そこで,表2-2に示した読みの過程と「問い」の分類を意識しながら,授業前に生徒の「問い」の想定をした。 右上表3-2は,研究協力員の先生と授業前に確認した生徒の「問い」(想定)である。 今回の大きな課題は,最も下の段に分類されている「問い」の一つである。教師の提示する大きな課題は,生徒に意識させる「問い」のうち,考えの形成に関わる「問い」と重なる。そして,そ こに至るまでの手がかりとなる小さな課題が,一 番上から三つまでに分類されている「問い」である。当初,「把握→精査・解釈→形成」に関わる「問 い」が順に出てくることを予想していたが,生徒たちの疑問は素朴なものから核心に迫るものまで幅広く,だんだんと大きくなっている生徒もいれば,大きいものから小さいものになる生徒,行ったり来たりする生徒など生徒によって様々であった。様々な生徒の「問い」をどのように整理し,授業の中で生かしていくのかということが教師の重要な役割である。また,両校ともに生徒たちから考えの形成に関わるような「問い」は出されなかった。しかし,手がかりとなる「問い」はいくつも出され,その「問い」を生かすことで教師の一方的な提示ではなく,生徒との協働といった形での提示が可能であることも分かった。生徒の「問い」をどのように整理し,生かしているかについては次項で詳述している。 (2)生徒の「問い」を生かす 〈A校 学習班での話し合いと教師の関わり〉 A校での実践では,生徒たちが自らの疑問を「問い」として整理し,学習班で順に解決をしていった。「問い」をもつことが,読みの深まりにつながるということが実感できれば,自分で読み深める面白さを感じることにもなるのではないかと考える。読む面白さは,次も自分で考えようという思いにもつながるだろう。実際の授業で,生徒が「問い」を整理していく様子,「問い」の答えを順に導き出していく様子を以下に紹介する。 (「問い」を整理している様子) X「この話的にはさ,なぞなこと,分からないことは鍵 J・K「へ?」「え?」 J「ごめん。おれが理解不能。」 X「一つの鍵が手に入ると,分からないことが分かるっ J「はあ?」 表3-2 『鍵』教師による生徒の「問い」の想定 Seito ②この詩の「鍵」が表しているものは何? ③作者にとっての「鍵」とは? ③どのようなメッセージが込められているか。 ④自分は「鍵」を見つけられる人か。 ④これまで鍵を見つけたことはあるか。 ④今,自分が見つけたい鍵は? が手に入れば分かるってことやろ?」 てことやんな?」 中学校 国語科教育 8 ①「燦然」「燐光」とは?(言葉の意味) ①なぜ,鍵が飛ぶの?ぶら下がるの?(比喩)
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