かせるのかを考えながら学習を展開していくことが求められている。 ①の課題については先に述べた活用する力の育成の視点から,②の課題については次の二つの視点から社会科が目指す資質・能力の育成を図り,その解決を図りたいと考える。 ア 見方・考え方を働かせた授業の展開 社会科の目標の柱書に示されている社会的な見方・考え方は,小学校社会科,中学校社会科の各分野の特質に応じた見方・考え方の総称であり,これを働かせていくことは,社会科,地理歴史科,公民科としての本質的な学びを促し,深い学びの実現,そして生きて働く知識の習得に不可欠であり,資質・能力の育成に深くかかわるものである。小学校社会科においては社会的事象の見方・考え方として,「位置や空間的な広がり,時期や時間の経過,事象や人々の相互関係などに着目して(視点),社会的事象を捉え,比較・分類したり総合したり,地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること(方法)」と示されている(22)。 さらに,平成28年の答申では社会的な見方について,次のような視点例が示されている。 このような視点から社会的事象をとらえ,様々な課題を追究・解決する活動において,社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を考察したり,社会に見られる課題を把握し,その解決に向けて構想したりすることが求められる。 教師には,どのような視点から社会的事象をとらえさせるのか,資料からわかる事実をどのように用いて考えさせるのかを計画的に考え,子どもたちが社会的事象の見方・考え方を働かせることができるようにすると共に,その見方・考え方を鍛えていくことが求められる。 イ 問いの設定 すべての教科・領域の学習を進めていく上で問いは不可欠である。適切な問いを設定することで,○位置や空間的な広がりの視点 地理的位置,分布,地形,環境,気候,範囲,地域,構成,自然条件,社会的条件,土地利用など ○時期や時間の経過の視点 時代,起源,由来,背景,変化,発展,継承,維持,向上,計画,持続可能性など ○事象や人々の相互関係の視点 工夫,努力,願い,業績,働き,つながり,関わり,仕組み,協力,連携,対策・事業,役割,影響,多様性と共生(共に生きる)など (23) 小学校 学習指導法 7 子どもたちは主体的に課題や問題に向き合うことができるようになる。そのため教師は発問を工夫したり,子どもたちの疑問に耳を傾けたりするなどし,子どもが抱く問いの質を高める工夫を重ねてきた。新学習指導要領で示された見方・考え方を働かせていく上でも,この問いを適切に設定することは非常に重要である。 社会科の授業では,教師が様々な資料等を用いて子どもたちと社会的事象を出合わせることで,その社会的事象について子どもたちが考えるように授業を構築していく。資料等を基に子どもに考えさせるが,教師がただ資料を提示しただけでは,子どもたちの思考は生まれない。その資料をどのような視点で,どのように読み取ったらいいのか,読み取った事実を基にどのように考えたらいいのか,教師はその方向性を指し示すために問いを投げかける。この問いを明確にすることで,子どもたちは見方・考え方を適切に働かせて社会的事象をとらえ,考えを深めることができるようになる。授業で教師と子どもがやりとりをする中で生まれる問いこそが,どのように考えるかを決定する重要な役割をもっている。 この問いには,事実に目を向ける問い,事実から社会的事象の意味を考えることを求める問いなど様々なものがあり,単元の学習場面や1時間の学習の場面によってその質が変わってくる。社会の学習プロセスの中でどのような場面でどのような問いが必要かを整理し,適切な見方・考え方を用い,思考を深めることができるように投げかけることが重要となる。 (3)本研究の構想 汎用的な資質・能力と社会科で育成を目指す資質・能力の両者を一体的に育む探究的な学習の充実を図ることで,生きる力の育成が実現できると考える。 しかし,このような多様な資質・能力を短い期間で育成することは困難である。年間の学習内容や単元構成等を勘案するとともに,各学年においてどのような力を身に付けるのか,どのような子どもの姿を目指すのかを共有し,資質・能力の計画的・系統的な育成を目指すことがより一層求められる。小学校教育課程という長いスパンの中でその力を育むためにも,まず,各学年においてどのような資質・能力の育成を目指すのかを明らかにし,その資質・能力の育成を目指したカリキュラム・マネジメントが必要となる。 11
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