001総教C030705H30加藤最終稿
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①主体的に社会の形成に参画しようとする態度や,②資料から読み取った情報を基にして社会的事象の意味や特色などについて比較したり関連付けたり多面的・多角的に考察したりして表現する力の育成が不十分であることが指摘されている。また,社会的な見方や考え方については,その全体像が不明確であり,それを養うための具体策が定着するには至っていない(後略) (下線は筆者による)(17) イ 活用する力の育成 学習したことが生きる知識となり,実生活で生かせるようになることが目指されている。そのためには単元を通じて習得した概念的な知識や法則を実際に使ってみる場面を設定する必要がある。 しかし,習得した概念を適切に活用することは容易ではない。平成19年実施の全国学力学習状況調査の算数A(13)算数B(14)の問題において,平行四辺形を求積する問題がそれぞれ出題されている。平行四辺形の求積公式を用いて解答するA問題の正答率が96.8%であったのに対し,地図上に示された長方形と平行四辺形の公園の面積を求積し,どちらが広いかを説明するB問題の正答率は18.2%であった。主として「知識」に関する力を図るA問題では正答率が高い問題が,「活用」する力を図るB問題では著しく正答率を下げる結果となっていることが明らかとなっている。奈須は,習得した知識・技能が容易に様々な場面で活用できるようにならない,転移しないことや,知識・技能の転移を可能にするには,具体的な文脈や状況を豊かに含みこんだ本物の社会的実践への参画として学びをデザインすることが必要であると述べている(15)。これは子どもたちが習得した知識・技能をこれから出合う様々な問題場面において適切に活用していくため,現実場面における様々な問題と子どもが対峙し,その問題に対して習得した概念等を活用する機会を設定したり,習得した概念等を用いて新たな問題について選択・判断したりするなど,多様な活用場面を設定する必要性を示している。 そこで,昨年度の研究実践を踏まえ,発展的な探究における活用Aの更なる充実を目指し,活用Aの場面を年間を通じて複数設定することで,活用する力の育成の充実を図る。単元を通じて習得した概念を活用する場面を,1単元で複数設定することは難しいが,そのような活用場面を1年間に1度だけ設定しても,子どもたちの活用する力を十分育むことはできない。どのような単元でどのような活用ができるかを計画し,活用場面を何度も経験することで,子どもたち自身が習得した概念を活用して考えるよさや楽しさを実感でき,活用する力の育成の充実が図れるだろう。 (2)各教科等で育む資質・能力 新学習指導要領では各教科等の目標に育成を目指す資質・能力の三つの柱が示されており,各教科等ではその育成を目指した学習を展開すること小学校 学習指導法 5 が求められている。その実現に向け,第2節第1項で示したように,探究的な学習を通じて学習の基盤となる汎用的な資質・能力の育成を図る。そこで育まれた汎用的な資質・能力を各教科等の学びに生かすことで,各教科等における学びが充実し,各教科等の資質・能力の育成が実現できると考える。汎用的な資質・能力を生かし,各教科等の資質・能力の育成を目指すが,探究的な学習を通じ,さらによりよく各教科等の資質・能力の育成を図るためにはどうすればよいのであろうか。本研究では社会科を例とし,各教科等で育成を目指す資質・能力を,探究的な学習を通じてどのように充実した育成を図るかを考える。 各教科等の目標は柱書と育成を目指す資質・能力の三つの柱から構成されている。小学校学習指導要領解説社会科編では,社会科を通じて身に付ける資質・能力が次のように示されている。 汎用的な資質・能力を活用し,上記のような社会科において育成を目指す資質・能力を適切に育むため,現在の社会科における課題はどのようなものがあるのかを考えると,平成28年の答申では,社会科の課題が次のように示されている。 ここには大きく二つの課題が示されている。 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。 (1)地域や我が国の国土の地理的環境,現代社会の仕組みや働き,地域や我が国の歴史や伝統と文化を通して社会生活について理解するとともに,様々な資料や調査活動を通して情報を適切に調べまとめる技能を身に付けるようにする。 (2)社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考えたり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を,選択・判断したりする力,考えたことや選択・判断したことを適切に表現する力を養う。 (3)社会的事象について,よりよい社会を考え主体的に問題解決しようとする態度を養うとともに,多角的な思考や理解を通して,地域社会に対する誇りと愛情,地域社会の一員としての自覚,我が国の国土と歴史に対する愛情,我が国の将来を担う国民としての自覚,世界の国々の人々と共に生きていくことの大切さについての自覚などを養う。 (16) 9

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