001総教C030705H30加藤最終稿
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話し合う活動をよく行っていた,という質問に対し,「当てはまる」,「どちらかといえば,当てはまる」という回答の合計が児童質問紙調査・学校質問紙調査において,それぞれ84.5%,97.3%と,非常に高い数値を示している。子どもたちが対話的な学びを行っていることを実感しており,その 8 図1-2 H29 全国学力学習状況調査 児童質問紙調査① 図1-3 H29 全国学力学習状況調査 学校質問紙調査① る中で論理的に考えたり,真理に到達するような構造化を成し遂げたりすることができるようになるといえる。複雑で変化の激しい,予測困難な社会の中では,一人ですべての問題を解決していくことは非常に難しい。しかし,多様な考えをもつ他者と協働することで,その困難に自ら立ち向かうとともに,よりよい解決策を模索していくことができるのである。対話的な学びの充実は,社会の変化に受け身で対応するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,自らの可能性を発揮し多様な他者と協働しながら,よりよい社会と幸福な人生を切り拓き,未来を築く子どもたちの育成につながっていく。 そのような重要性の高い対話的な学びは,これまでの学校教育においても,言語活動を充実させる取組や,グループでの話合い活動などにおいて,様々な実践が行われ,その充実が図られてきている。全国学力学習状況調査の質問紙調査においては,子どもたち同士の対話について,児童・学校いずれにも話し合う活動を行っていたかどうかという質問を設定している(12)。その質問の結果は次の図1-2,1-3のように示されている。 小学校 学習指導法 4 ような学習が日々展開されていることがうかがえる。また,指導者も子ども同士の対話を意識しながら授業を展開し,対話的な学びの構築に向けて取り組んでいることが推察できる。 しかし,その対話をさらに充実したものにしていく必要性が下図1-4,1-5の質問紙調査の結果から考えることができる。 図1-4 H29 全国学力学習状況調査 児童質問紙調査② 図1-5 H29 全国学力学習状況調査 学校質問紙調査② 話合いの結果,子どもたちの考え方に深まりや広まりが見られたかという質問に対して「当てはまる」「どちらかといえば,当てはまる」と回答した子どもの割合は68.3%となっている。肯定的にとらえている割合は高いが,図1-2で示されたように,話し合う活動は行っていると回答した子どもが84.5%であったことと比較すると,16.2ポイントもの差異が見られる。同様に指導者の「当てはまる」「どちらかといえば,当てはまる」という回答の割合は71.9%となっており,先の項目と比較すると25.4ポイントの差異が生じている。さらに「当てはまる」と回答した割合はそれぞれ27.0%,9.7%にとどまっている。話し合う活動は行っているが,考えを深めたり広げたりする話合い活動が十分行われていない,行ってはいるものの深まりや広がりが子どもも指導者も十分実感できるような質の高い話合いになっていない,という現況がうかがえる。話し合う活動をすること自体が目的となるのではなく,対話によって考えを広げたり深めたりすることができるような学習を展開することが求められる。

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