001総教C030705H30加藤最終稿
5/32

異なるが,単元末における活用問題を意識しながら学習に取り組む中で,さらにどのようなことができるようになればいいのかを考えたり,自分たちに必要なことを意識したりする姿が見られた。次の時間は○○なことを学習したい,学習で生まれた新たな疑問をもっと調べたい,などの感想を述べる姿が多く見られ,子ども自らが課題に向き合い,主体的に単元の学習に臨むことができた。 さらに,発展的な探究における活用場面を設定したことにより,子どもたちがこれまで以上に学習して習得した知識・技能を活用して思考・判断し,考えを深める姿が見られた。習得Aが机上の概念として終わるのではなく,生きて働く知識として活用することができたといえよう。 上記の成果が見られた一方,課題も散見された。 1つ目は,基礎的な探究における習得が十分ではない子どもがいたことである。基礎的な探究における習得が充実したものにならなければ,当然活用を図ることはできず,発展的な探究にもつながらない。基礎的な探究の充実をどのように図るかを考えていく必要がある。 2つ目は様々な活用場面が十分設定できていないとである。発展的な探究の場面は単元構想上や時間的な視点から1単元で1場面設定することが限度であると考える。しかし,習得した概念の活用には,意志決定,価値判断,現実化などと,様々な方法がある。多様な活用場面を設定し,活用を繰り返すことで,様々な現実の問題場面で生きて働く力を高めることが必要であると考える。 第2節 探究的な学習を通じて育む資質・能力 生きる力を子どもたちに育むために,どのような資質・能力の育成を目指すかを,平成28年の答申では次のように大別して示している。 このように,育成を目指す資質・能力には様々なものがある。本研究では探究的な学習を通じて・例えば国語力,数学力などのように,伝統的な教科等の枠組みを踏まえながら,社会の中で活用できる力としての在り方について論じているもの。 ・例えば言語能力や情報活用能力などのように,教科等を越えたすべての学習の基盤として育まれ活用される力について論じているもの。 ・例えば安全で安心な社会づくりのために必要な力や,自然環境の有限性の中で持続可能な社会をつくるための力などのように,今後の社会の在り方を踏まえて,子供たちが現代的な諸課題に対応できるようになるために必要な力の在り方について論じているもの。 (9) 小学校 学習指導法 3 学習の基盤となる汎用的な資質・能力と,各教科等の学習で求められる資質・能力の育成を目指すとともに,その育成を通じ,探究的な学習の充実へのフィードバックも図る。 (1)汎用的な資質・能力 変化の激しい知識基盤社会の中で,子どもたちには主体的に学んで必要な情報を判断し,よりよい人生や社会の在り方を考え,多様な人々と協働しながら問題を発見し,解決していく力を育むことが求められている。そのため,実際の社会で活用することができる,課題設定力や論理的思考力,コミュニケーション能力等の多岐にわたる汎用的な資質・能力を育成する必要性が高まっている。本研究では対話的な学びの充実,活用する力の育成の二つの視点を中心とし,汎用的な資質・能力の育成を目指す。 ア 対話的な学びの充実 対話的な学びはこれまでもその必要性が示されてきている。他人とともに協調すること,他者と協同して取り組む学習活動にすること,多様な人々と協働することなどである。言葉に多少の違いはあるが,目指す方向性は同じである。 ではなぜ対話的な学びが必要なのであろうか。新学習指導要領総則編には対話的な学びによる授業改善の視点が次のように示されている。 子どもたちがグループや学級で議論や討論をすることはもちろん,子どもと教師のやり取りや,ゲストティーチャーとして招かれた地域の方とのやり取りなど,様々な対話の対象・場面を想定している。このような対話を行うことにより,自己の考えを広げ深めることが対話的な学びの意義である。田村は対話的な学びの価値について,次の三つを挙げている(11)。 子どもたちは個々に様々な考えをもっているが,個々で考えるだけでは,その考えから広がりや深まりを見出すことには限界がある。自分とは異なる考えをもつ他者と交流することにより,自らの知識や考え方を広げ,様々な視点や考えをつなげ 子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているかという視点。 (10) ①他者への説明による情報としての知識や技能の構造化 ②他者からの多様な情報収集 ③他者と共に新たな知を創造する場を生み出すととともに,課題解決に向けた行動化 7

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る