このような習得・活用のサイクルが繰り返され ることにより,単元を通じて習得を目指す概念的 な知識や一般的な法則を身に付けることができる ようになる。 図1-1 探究的な学習のプロセス 子どもたちは1時間の学習の中で新たな知識・技能を身に付ける。これが習得aである。その習得した知識・技能を用い,問題や課題について思考したり判断したりして考えを深めていく。これが活用aである。その結果,新たな知識・技能,深まった考え等を習得することができる。このような学習を繰り返すプロセスを基礎的な探究と位置づけた。基礎的な探究では,習得a活用aのサイクルが繰り返されることで,単元を通じて獲得を目指す概念や一般的な法則等が習得される。それが習得Aである。さらにその習得Aの概念等を用いて現実の問題について考えたり,自らの意志を決定したりするなどの活用する場面を意図的に設定する。これが活用Aである。このように習得した概念等を活用することで,現実の問題場面において生きて働く知識となることを目指すプロセスを発展的な探究として位置づけた。習得と活用からなる基礎的な探究と発展的な探究を含んだこのような学習過程が探究的な学習である。 6 人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は,こうした資質や能力を,変化の激しいこれからの社会を「生きる力」と称する (6) ・社会的・職業的に自立した人間として,我が国や郷土が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野を持ち,理想的に実現しようとする高い志や意欲を持って,主体的に学びに向かい,必要な情報を判断し,自ら知識を深めて個性や能力を伸ばし,人生を切り拓いていくことができること。 ・対話や議論を通じて,自分の考えを根拠とともに伝えるとともに,他者の考えを理解し,自分の考えを広げ深めたり,集団としての考えを発展させたり,他者への思いやりを持って多様な人々と協働したりしていくことができること。 ・変化の激しい社会の中でも,感性を豊かに働かせながら,よりよい人生や社会の在り方を考え,試行錯誤しながら問題を発見・解決し,新たな価値を創造していくとともに,新たな問題の発見・解決につなげていくことができること。 (7) ・学びと自分の人生や社会とのつながりを実感しながら,自らの能力を引き出し、学習したことを活用して,生活や社会の中で出会う課題の解決に主体的に生かすこと。 ・子どもたちが情報を的確に理解し,自分の考えの形成に生かすこと。 ・教科の一つ一つの学びが何のためか,どのような力を育むものかが明確でないこと。 ・これからの時代には,情報活用能力や問題発見・解決能力,様々な現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力など,特定の教科等だけでなく,全ての教科等のつながりの中で育まれるものが多い。各教科等を学ぶ本質的な意義を明らかにしていくことに加え,教科等を越えた視点で相互の連携を図ること。 (8) このような生きる力の育成を目指し,これまで総合的な学習の時間の創設や,言語活動の充実など様々な改革や実践が行われ,多くの成果が上げられてきた。そして,その生きる力の育成を目指し,平成28年の答申では,学校教育を通じて育てたい子どもの姿を次のように示している。 上記のような姿は,変化の激しい社会を生きるために,これまでに学校教育で育成を目指してきた生きる力を,現在,そしてこれからの社会の文脈の中で改めてとらえ直し,しっかりと発揮できるようにすることで実現できるものであると示されている。生きる力の育成を目指し,学力の三要素のバランスのとれた育成や,各教科等を貫く授業改善の視点であった言語活動や体験活動の重視による成果を受継ぎ,今後も一層の取組の充実を図ることが必要である。 一方,平成28年の答申には生きる力の育成に向けた教育課程の課題について様々な指摘もなされており,その課題は以下のように整理できる。 このような課題の解決を図り,生きる力を育成小学校 学習指導法 2 し,これからの変化の激しい知識基盤社会をたくましく生き抜くことができる子どもを育むことは,教育における喫緊の課題である。この課題の解決に向け,本研究では探究的な学習の充実を図っていく。 (2)1年次の研究における成果と課題 図1-1に示す探究的な学習のプロセスを基盤とし.探究的な学習の充実を図った。 この探究的な学習を子どもたちが主体的に取り組むことを目指し,単元の最後の活用場面における活用問題を予め提示したり,1時間ごとの学習において本時の問題意識を醸成したり,問題意識を連続したりすることを通じ,子どもがその学習に主体的に取り組めるようにした。 その結果,次のような成果が見られた。まず,子どもたちが高い学習意欲をもち,問題解決に臨むことができたことである。教科や単元によって
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