001総教C030705H30加藤最終稿
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(26)前掲(6) おわりに 現在進行中の第四次産業革命の進展はこれまでにない速さで社会変革をもたらしている。本稿を作成している間にも新たな技術が生まれ,巷をにぎわせている。変化の激しいこれからの未来社会をたくましく生き抜くためには,様々な課題に自ら向き合い,他者との協働を通じてその解決を図り,よりよい社会の構築を目指す力をもった子どもの育成が求められる。探究的な学習はまさにこれからの社会に対応する子どもたちを育てる学習であるといえる。この研究が礎となり,これからの日本の未来を支える子どもたちが一人でも多く育成することができればと願っている。 最後に,よりよい子どもの育成を目指し,日々大変お忙しい中にもかかわらず,長きにわたり様々な実践に快く協力していただき,ご一緒に探究してくださった京都市立朱雀第一小学校と京都市立伏見板橋小学校の校長先生をはじめ,研究協力員の先生方,いつも温かく迎えてくださった両校の教職員の皆様に心より感謝の意を表したい。 34 ・算数科でも自力解決の後で対話を取り入れることで,集団解決の時に様々な解き方が出てきた時に,他教科でも身に付けた力を生かせると感じました。 ・グループで話し合い続けてきたことで,自力解決の場面では考えをまとめることができなかった子どもに教え合う姿が以前より見られるようになりました。グループで出た意見をまとめながらなんとかわかってもらおうとグループ全体で一生懸命教え合う姿がより見られるようになりました。 ・どの教科でも友達の意見につなげたり,既習事項から考えたりできるようになりました。理科の予想する場面では, 意見を練り合うことができるようになり,実験や観察で調 べる活動に対して,意欲的・主体的になりました。 本研究の実践を通じ,子どもたちが育んだ資質・能力を他教科の学習においても生かすことで,他教科の学習でも子どもたちが学びの質を高めることにつながっている様子がうかがえる。これは,探究的な学習を通じて教科の資質・能力が育まれただけではなく,汎用的な資質・能力が育まれたことで,様々な教科で身に付けた力を用いて考えることができた結果ととらえることができる。 探究的な学習は社会科だけではなく,各教科等においてその充実が求められている。各教科等にはそれぞれの特性があるが,その特性に応じ,基礎的な探究と発展的な探究を単元に位置づけ,発展的な探究における活用を目指し,基礎的な探究においてどのようなことを習得させるのかを考えることは可能であろう。また,平成28年の答申では,次のように評価について示されている。 単元末に子どもたちが習得した知識・技能を用いて活用する場面は,パフォーマンス課題の提示の場面ととらえることもできる。つまり,求められる資質・能力の育成を適切に図るために発展的な探究の活用場面を設定することは,今後求められる学習評価と合致するのである。 ○ また,資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには,指導と評価の一体化を図る中で,論述やレポートの作成,発表,グループでの話合い,作品の制作等といった多様なパフォーマンス評価などを取入れ,ペーパーテストの結果にとどまらない,多面的・多角的な評価を行っていくことが必要である。 (26) 算数では,習得した知識・技能を活用して現実の問題に取り組んだり,習得した概念を用いて数学化された考えを説明したりする場面を設定することも考えられよう。また,国語では読み深めた物語について,同じ視点から同一の作者の物語を書かれた時期や時代,背景等をもとに比較して特徴をとらえたりすることも考えられる。 このような学習は,各教科等においてこれまでに実践が積まれてきているものもある。今後各教科等の見方・考え方を適切に働かせることや,質小学校 学習指導法 30 の高い対話的な学びの実践を通じ,基礎的な探究を充実させ,さらに発展的な探究における活用場面を適切に設定し,各教科等の探究的な学習のより一層の充実を図っていく必要がある。そうすることで,子どもたちに各教科等で育成を目指す資質・能力と,汎用的な資質・能力を一体的に育成することができるようになり,そして,各教科等でこのような実践が達成されることで,図4-16に示すように,子どもたちに必要な生きる力の育成が実現できよう。 図4-16 生きる力の育成の実現を目指して

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