図4-14 C群の子どもたちのアンケート結果 得Aの考えを活用Aの場面を通じて深めた様子は,図4-15のノートの記述からも見て取れる。 B校第6学年の「世界に歩み出した日本」の実践における第7時と第8時におけるそれぞれの問いに対する考えの記述である。第7時までの考えが第8時では変容しているのがわかる。第8時には,これまでに習得した概念や知識を根拠とし,さらに他者との対話を通じて獲得した視点から考えを深め,主張をまとめていることがわかる。このように,子どもが活用Aの場面で適切に習得Aを活用すること目指し,基礎的な探究の充実を図る手立てを講じ,探究的な学習の充実に向けた方策は,C群の子どもたちの学力の保証にもつながっていくといえよう。 第8時「世界に歩み出すため,近代国家を目指した日本の取充当する時間として設定することも可能である。しかし,単元の学習を通じて子どもたちはそれぞれの政策の意図や意味,その結果どのようなことが起きたのかなど,社会的事象についての理解を深めたことで多様な価値観を獲得している。獲得した価値観の根拠をもとに議論することで,習得した概念や知識を適切に活用すると共にその概念の質を深めることが可能となる。 実践では,第3章で先述したように,この後さらにこのような獲得した視点をも踏まえ,国の政策を評価する活用Aの場面を設定した。その活用を通じ,子どもたちは思考をさらに深めた。しかし,習得Aの時間に活用Aの場面をこのように組み入れることでも子どもの思考を深めることは十分可能であることが示されたといえる。 このように,習得Aの場面に活用Aの場面を適切に組み込むことで,限られた指導時数の中でより効果的に子どもたちの活用する力を高めることができると考えられる。 ①・②のような方策をとることで,子どもたちに付けたい力をより効果的にはぐくむことが可能になると考えている。さらなる充実に向け,このような視点からの年間の授業計画を構築していくことが求められる。 第3節 探究的な学習の広がり (1)C群の子どもの伸長 探究的な学習を通じた子どもたちの変容する姿は,特定の子どもに見られるものではなく,ABCの三段階で成績を示した際,学級担任による実践前の評価がC群の学力に課題のある子どもたちにも見られた。まず,C群の子どもたちのアンケート結果を右上図4-14に示す。実践前と実践後を比較すると,実践前に比べ評価が向上した項目が多くみられるのがわかる。また,見方・考え方シートの活用や,対話の可視化,活用Aの場面の設定などについても,子どもたちはその有用性を実感している傾向が高いことが実践後アンケートのみの項目の評価からも見て取れる。ここで質問⑧の項目に着目してみる。多くの子どもは活用Aの場面で考えを深めることができたと実感している。発展的な探究での活用Aの充実を図るためには,充実した基礎的な探究を通じ,習得Aを確実に行う必要がある。C群の子どもたちがこのように評価をしたのは,習得Aを適切に活用できたことを実感しているためだといえる。実際に子どもが習 (2)各教科等への広がり 本研究では社会科を中心に実践を行ってきたが,探究的な学習の実践を通じた結果,社会科以外の教科での子どもたちの変容について研究協力員から次のような報告をいただいた。 B校第6学年 『世界に歩み出した日本』の実践より 第7時「日本の国際的な評価を最も高めた政策は何か。」 ・二つの戦争だと思う。二つの戦争に勝ったことで,その賠償金を国内産業に使い,人々の生活が豊かになったから。 ・初めはほぼ評価できるだったけど,いろいろな意見を聞いて今は少し評価できるになった。戦争をするのはいいけど,外国との関係が悪くなったりするし,国内で公害になったりしているところがあったから。公害を少しでもなくすための政策をしたらよかったと思う。 33 図4-15 記述に見られる考えの深化例 小学校 学習指導法 29 組は評価できるだろうか。」
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