A児 友だちの意見と似ている時。付け足しができるから。 B児 友だちが意見をつなげていってくれた時。 C児 自信がなくなるからあまり思わない。 D児 違った意見と出合ったとき自分の考えがゆれるから。 A児やB児は実践後の評価が実践前より下がっているものの,対話によって考えが深められているという旨の記述をしている。実践前後の学習の様子を比較すると,実践前に比べ,実践後の対話の質は向上している様子が見られた。実践を通じてよりよい対話の在り方を認識し,実践前は曖昧だった目指すべき対話像が明らかとなり,その対話像に対しての現在の自分たちの姿を照らし合わせた結果,さらなる伸びしろに気付き,アンケートの評価が下がったのではないかと推察できる。 す必要性を実感したことがわかる。その後,対話カードを配布し,そのカードを使用しながら子どもたちが対話を進めていったことにより,8割以上の子どもたちが考えを深める対話の在り方を理解していったことが,図4-6の質問の回答結果に示されている。 図4-6 児童質問紙調査回答結果⑤ 実践前はA校では半数近く,B校でも4人に1人の割合で「あまりそう思わない」と回答していいた子どもたちであったが,実践を通じ,「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」のいずれかを回答した子どもの割合が9割以上を示すようになった。質の高い対話の在り方を理解した結果といえよう。 さらに,実際に自分たちがこのような対話を通じて考えを深めることができたかどうかについての質問の回答結果を図4-7に示す。 図4-7 児童質問紙調査回答結果⑥ A校B校の両校において,実践前から子どもたちは比較的対話を通じて考えが広がったり深まったりすると感じていたようであるが,実践を通じ,さらに対話による考えの深まりを実感しているという結果が見られる。なぜそう感じているのか,実践前よりも自己評価が伸びた子どもがその理由を記述したものの一部を以下に示す。 小学校 学習指導法 25 ードが多くみられた。自分の意見だけでなく友達 の意見を加えることで新たな考えを見出すことができるという視点から対話の深まりを感じている。 第6学年の記述例からは,意見の理由に目を向けたり総合して新たな意見を見出したりする子や,さらには異なる意見の友だちと議論をすることで意見の深まりを見出す子どもも見られる。ただ事実を出し合って終わるのではなく,互いの意見をやり取りすることを通じ,新たな考えを作ったりその考えを議論し合ったりすることで考えを深めることに対話の意義を見出していることがわかる。 一方,アンケートでは実践前と比較して実践後の評価が下がった子どもも見られた。その子どもたちの記述には次のようなもの見られた。 また,自信がなくなる,考えが揺れるといった回答をしたC児やD児は,実践前から意欲的に対話をする姿が見られ,グループでも発言力があった子どもであった。しかし,実践を通じ周りの子どもたちもどんどん意見を述べたりすることができるようになり,意見が対立する場面も見られるようになった。自分の考えだけで結論を導くことができなくなり,対話で考えを深められないと感じているのではないかと推察できる。しかし,そのような対話を通じ,グループの子どもたちは思【A校 第4学年】 ・自分の考えだけでなく,友達の意見も聞くとそれを一つにしてまた新しい考えが出てくるからです。 ・友だちの意見に関係することを言うと深まる。 ・つけ足して言ってくれたりするからです。 【B校 第6学年】 ・意見が同じだった時もなぜかなど理由を話し合うから。 ・相手と自分との意見を合わせたりするから。 ・友だちが自分の意見に反論してきても,それを踏まえてさ 第4学年の記述例には,付け足しというキーワらに意見が言えるから。 29
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