A児(評価できる) ・政府がしたことは正しい と思った。理由は国を安定させるために憲法をつ くったりしたからです。 B児(評価できない) ・民衆は負担に不満を持っ C児(評価できない) ・政府がやりたいことばか りやって民衆の気持ちを分かっていない。最初は よい国づくりとか言って いたのに,結局悪い方向 に行ったから。 また,この記述からこれまでに習得した知識や概念等を活用するとともに,この討論を通じて多角的に社会的事象をとらえ,深まった自分の考えを表現しているのがわかる。 討論前 討論後 ることを目指した。その討論の様子の一部を示す。 「3人の武将と天下統一」の学習と比較すると,子どもたちが学習して習得した知識や概念をより適切に活用しながら自分の考えを述べている姿がT 明治政府が行った国づくりは評価できると考えた人の主張をしてください。 C1 民衆からしたら納得できない部分はあったかもしれないけれど,国会や議会を開いたおかげで,他の国から強い国やなと思われたから評価できる。 C2 政府の人たちは,日本が外国と戦って負けているから負けない国にしようと学習した。民衆には納得できないことがあったかもしれないけれど,国という大きな部分で見ると大きく成長した。国を大きく強く成長させたら,今は苦しくてもそのあと楽になるから。 C3 いい国をつくるためには何かしら犠牲にしないといけない部分もある。民衆が苦しんだのも少しは仕方がない。地租改正などで反省することはあるけれど,殖産興業などもあるし,江戸幕府のようにカチカチに固まった縛られた国ではなく,政府は歩み出しているから。 C4 外国まで行って平和な国にしようとした。民衆には少し苦しい思いをさせてしまったけど,外国に負けないために軍事力と経済力を高めるために政策を行ったから。 C5 明治政府は民衆のことを考えていた。地租改正とか,国の収入を安定させるために税のしくみを安定させたりしたのも強い国にするためで,民衆のことを考えている。 T 評価できないと考えた立場の人はどう考えますか。 C6 政府の人たちが憲法をつくったときに,民衆は不満とかもっていて納得いってなかったから。 C7 自由が少ないと思いました。法律の範囲でとか,五日市憲法だったらもっと自由があるのに。 C8 民衆の立場に立って考えたけど,明治政府はこれからの日本を強い日本にするために改革を発表したけれど,民衆の自由があまり考えられていない。政府とかの利益は考えられるけど。これからの日本のことを考えているのはわかるけど。 C9 結果的に民衆は不満を抱えていたり苦しんでいたりした。仕事を与えたりしていたら。 C10 五箇条の御誓文でみんなの意見を聞くとか平等な国とかあれだけいっておいて,最終的には天皇が神みたいなことをいって,民衆のことを考えずに政府だけで国づくりを進めていって,国づくりは日本国民全体で国をつくっていくものだから,国づくりになっていない。 T 評価できる立場の人,この反対側の主張に対しての反論はありますか。 C2 民衆は政府の国づくり全てに反論したのではなくて,納得できたものもあった。選挙もできるようになったのは,民衆にとってうれしいこと。民衆側にとってより良いこともしている。その上で国づくりをしている。 C3 自由が少ないといっているけれど,江戸時代に比べると自由は多いと思う。地租改正の税は政府の利益だけではなく,民衆のために使っているはず。徴兵令は仕方ない。日本はかなり遅れているから,それに勝つためには人数で勝たないとダメだから。 T 評価できない人は今の意見に反論はありますか。 C11 占拠をして国会を開いたとあったけど,政府は最初受け入れていなかったじゃないですか。五箇条の御誓文にもみんなの意見を聞いて決めようとあったのに。政府が守らないんだったら何のためにつくったの? C12 江戸時代から変化したとあったけど,民衆にとっては自由は少ないし苦しんだりしているから変化したというよりあまり変わっていない。 見られる。それぞれの立場をなぜ選択したのか,単元の学習を通じて習得した知識や概念等を根拠としながら自分の考えを主張し合っている。さらに,互いの主張に対する反論についても,それぞれの立場における根拠を示しながら討論を重ねることができ,自分の立場だけではなく,多角的に社会的事象を捉え,討論を通じたことで思考を深めることができたといえよう。 また,教師の発言も,「3人の武将と天下統一」の時と比較すると,それぞれの立場の発表を促す進行役に徹するだけで議論が深まっているのがわかる。根拠を示すことを求めたり,論点を整理したりしながら討論を進める場面が見られなくなっているのは,子どもたち自身が論点を明確にするとともに,学習して習得した知識・概念等を適切に活用しながら討論をすることできたため,討論すべき視点が焦点化された結果であると考えることができる。 討論を通じた結果,相手側の立場の考えに寄った子どもや評価が逆転した子ども,より自分の立場の考えを強くする子どもなど,考えが深まったことによる変容が多く見られた。図3-10に示すように,子どもたちは討論を通じて獲得した新たな視点を踏まえ,様々な角度から自分の考えを主張することができた。 ていたから。 A児(評価できる) ・政府は日本を強い国や安定している国にしようとしていたから,民衆のことを何も考えていないという意見があったけど,政府は考えていた。 B児(評価できる) ・政府は経済力を高め,軍事力を強くするっ工夫をしていることがわかったから。 C児(評価できない) ・強い国とか江戸時代から変化したとかそういうのはいいことだけど,最初に民衆の願いなどかなえていい国なると思ったけど結局は政府のことばかり考えているから。 25 図3-10 討論前後の子どもの思考の変容 小学校 学習指導法 21
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