001総教C030705H30加藤最終稿
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子どもたちが四者の視点が大切だと気付きながらも,その上でどの視点をより大切にするべきなのか,なぜそうすることが必要なのかを考えることができている。習得した概念を活用して考えたことで,現実の社会問題について考えを深めることができたといえる。 最後に「きょう土をひらく 用水のけんせつ~琵琶湖疏水~」の単元である。先人たちの功績により建設された琵琶湖疏水は,京都の産業の発展などを支え,今なお人々の生活を支えていることを踏まえ,60年前に途絶えた通船事業が復活した理由を考えることを通じ,琵琶湖疏水を未来につなげていくという視点を獲得することができるよう,図3-7のように活用場面を設定した。 図3-7 第4学年「きょう土をひらく 用水のけんせつ ~琵琶湖疏水~」活用設定場面 単元を通じ,子どもたちは琵琶湖疏水が現在の京都市,自分たちの生活にとっても重要なものであり,それが先人の功績によるものであることをまとめていったが,以前途絶えた通船事業が復活したことを知り,その目的を調べていった。その目的が観光資源としての視点以外に人々に琵琶湖疏水の認知を広めるという視点があることを知り,その意味について習得した概念等を活用しながら考えた。そして,琵琶湖疏水が過去から今に至るだけのものではなく,これから先の未来にもつながるものであること,先人の思いを自分たちが未来につなげる必要性などの未来志向の視点を獲得し,考えを深めた姿が見られた。最後には琵琶湖疏水のキャッチコピーを作成し,その理由をまとめた。その一部を以下に示す。 これまでの学習で習得した概念をもとにし,先「今も昔も未来も 京都の命 琵琶湖疏水」 →今は琵琶湖疏水があって水が飲めるし,昔も琵琶湖疏水があってとても助かってるし,未来も助かることがきっとあるから。 「今も未来も京都を支える琵琶湖疏水」 →今も必要だし未来も必要だから。水がなかったら京都は今でも伝染病がはやっていた。 「みんなの願い琵琶湖疏水」 →北垣知事は京都がよりよくなるようにと願ってつくり,上下水道局の方も未来の京都に欠かせないと思っているから。 小学校 学習指導法 19 人の功績という視点だけではなく,未来にもつなげていくものであるという視点を獲得しており,より深く考えることができたといえよう。 イ 第6学年の実践 第6学年の歴史学習は,一つの大単元で構成されており,第6学年における社会科の学習の7割以上の時間を占めるものとなっている。第4学年では,習得した概念や知識等を活用する場面として現実化や未来志向などの多様な場面を設定することができるが,この歴史単元では様々な場面設定をすることが難しい。そこで,それぞれの時代について習得した概念や時代観をもとに,当時の歴史的事象を客観的に判断する場面を設定することで習得した概念等の活用を図った。そうすることで,歴史を初めて学習する子どもたちも共通の視点をもって客観的にとらえるとともに,概念を活用して思考を深めることができると考えた。 まず,「3人の武将と天下統一」の単元である。活用場面は図3-8のように設定した。 図3-8 第6学年「3人の武将と天下統一」活用設定場面 全国統一を目指した織田信長,豊臣秀吉,徳川家康の3人の武将の功績について調べたことをもとに,誰が最も功績があるといえるのかを討論することで,多角的に事象をとらえ,考えを深めることができると考えた。国語の学習で学級討論会を既習しており,討論の流れを子どもたちは理解している。そこで,これまでの学習を踏まえて織田信長,豊臣秀吉,徳川家康の3人から全国統一に最も貢献したと考える人物を一人選び,その理由について主張・反論を行った。その時の様子を以下に示す。 T まず,三人の武将の中からこの人が一番貢献したんだと選んだ意見を主張してもらいます。まず織田信長から。 C1 織田信長の勢いで豊臣秀吉は天下統一をした。豊臣秀吉がいなかったら徳川が天下統一できなかったと思う。最初に天下統一の土台をつくったから。 C2 織田信長は楽市楽座とか,キリスト教を許したり新しい仕組みを作って城下町に住む民を豊かにして,豊臣秀吉や徳川家康は織田信長の作った土台を使ったから。 T 豊臣秀吉の立場の人どうぞ。 C3 織田は明智光秀に本能寺の変で殺されて,そのあと豊臣が明智光秀を倒して恨みを晴らす。豊臣は検地をして百姓をどん底に落とすけど,伏見城をつくった。京都はまっすぐな道があるけれど,豊臣秀吉がつくった。豊臣がしなければ今の京都はないから。 C4 身分をつくったことによって,身分が低い人は豊かなく23

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