001総教C030705H30加藤最終稿
19/32

方・考え方を適切に働かせることができるようにしている。そこで,事実を獲得したうえでなぜそのようなことをしているのか,どのような意義があるのか,などの主に社会的事象の意味について考える段階を中心にグループで対話する場面を設定することで,焦点を絞ってより考えを深めることができるようにした。その際,対話カードを利用するとともに司会を輪番制にし,司会・話し手のどちらの立場も繰り返し経験できるようにした。このような対話の場面を各時間に適宜設定することで,対話による学びの充実を図っていった。 次に示すのは「世界に歩み出した日本」における3/8Hの授業の子どもたちの対話の様子である。 この時間の学習では,日清戦争や日露戦争は日本にとってどのような意味をもっていたのかを考えることを目標とした。そこで,まず,事実をとらえるため,それぞれの戦争はどのようなものであったかを子どもたちは調べ,それぞれの戦争の特徴をとらえた。その上で,それぞれの戦争による被害の過多はあれど,なぜ行ったのかを考えることで,日本にとって二つの戦争のもつ意味を考えることができるようにした。このグループの対話では,司会が論点を絞ることができるようになT 日清戦争や日露戦争はどんな戦争だったのかな。 <子どもの主な発言内容> ・どちらも一年くらいの戦争だが,日清戦争よりも日露戦 ・両方の戦争の後に条約が結ばれた。 ・講和会議が日清戦争は日本で,日露戦争はアメリカで行 ・賠償金が支払われたり島などをもらったりした。 T なんで多くの人が亡くなって,お金も多くかかったのに争の方が被害が大きい。 われた。 日本は戦争を行ったの? C1 なぜ日本は被害が出たのに戦争を行ったのか考えます。意見はありますか? C2 たぶん,死者もいるし,戦費もかかっているけれど,その代り島を譲ってくれたりとか,(賠償金も)それ(戦費)よりも上だったから。その方が得するから戦ってもいいや,と思ってやった。でもたくさんの人が亡くなって,(日露戦争では)島もお金も全然渡してくれへんかったから不満が高まった。 C3 C2さんと似ていて,やっぱり被害が多いけれど(戦争を)やることで,日本に利益がある。利益があるということで,世界からも,(日本は)世界に入ったばっかりやったから,世界にも強いで,というアピールもこめたんだと思う。 C1 では,得とか利益とかあったけど,どんな利益がありましたか。 C2 島を譲ってくれたりとか,お金をもらえたりすることが日本にとっては得だと思う。 C3 つけたしで,お金と島とあと日本にとっては世界に認められるということ。 C1 話し合いをまとめると,二つの戦争をしたのは,日本には被害もあったけど,それ以上の利益や得があったからということになりました。 小学校 学習指導法 17 っているのがわかる。また,論点を絞るだけではなく,二人の意見の共通点を尋ねたり,意見を集約しながら戦争を行った意義を,自分たちの話合いで出てきた言葉を用いながらまとめたりしているのがわかる。さらに,話し手も習得した事実を基にし,そこからどのようなことを考えることができるのか,事実を根拠としながら理由付けをし,自分の考えを示す姿が見られる。このような姿は対話カードを用いたこと,自分たちの対話を可視化し,目指す対話の在り方を明らかにしたことによる変容ととらえられる。この話合いに用いた時間は3分ほどであるが,短い時間の対話の中で効果的に考えを深めることができたため,その学びを生かし,後の全体学習で,さらに考えを深め合う学びが展開された。 対話カードを用いたり自分たちの対話を可視化したりしたことで,考えを深めるために必要な対話の視点を明らかにしながら話し合う子どもの姿が見られるようになった。また,見方・考え方を適切に働かせるために発問を二段階に分け,各時間に習得した事実等を用い,意味等を考える場面において対話を取り入れたことで,子どもたちが全体で確認した共通の事実認識のもとで思考することができ,視点を整理しながら考えを深める手立てともなった。対話の充実を目指した手立てを講じたことで,子どもたちの対話する力が高まり,知識等の習得aとその活用aという基礎的な探究のサイクルが充実し,確実な習得Aの実現につながっていったといえよう。 第2節 発展的な探究の充実 (1)様々な活用場面 子どもたちが習得した概念等を活用する機会を保証するため,各学年の実態や単元の内容に応じた適切な場面の在り方を考えるとともに,実践を行った各単元の終末に活用Aの場面を設定した。 ア 第4学年の実践 活用場面を設定する際,身近にある様々な社会的事象について学習する第4学年では,自分事としてとらえることができるようにすると共に,現実化したり未来志向したりと,様々な活用をすることができるように意図して単元を構成した。 まず,A校の第4学年である。「火事をふせぐ」の単元では次頁図3-5のように習得Aを活用する場面を設定した。 21

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る