001総教C030705H30加藤最終稿
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C1 前僕やったからC2さんからどうぞ。 C2 えっと,他の大名と一向宗の仏教勢力をおさえて天下統一を成し遂げたことと,大阪を中心とした物資の流れをつくって金や銀の鉱山を支配したりすることで収入を確20 たちが対話に対してどのようにとらえているかについて質問したアンケートの結果である。 図3-4 対話の実態アンケートの結果 このアンケート結果を提示したことにより,子どもたちは対話の重要性や有用性について共通の認識を獲得すると共に,自分たちがどのように対話を行っていけばよいのかがわからないという問題点にも気付くことができ,よりよい対話の在り方について考えようとする問題意識を高めることができた。 実際の授業では,自分たちの授業中の対話の様子を映像で確認し,その上でアンケート結果を提示し,対話における問題意識を高め,ワークシートを用いて自分たちの実態と課題を明らかにしていった。対話の実態を調べ,事実を並べていることが多いこと,他の人がすでに発表した同じ事実を繰り返し発表している等,自分たちの対話の課題に気付くことができた。子どもたちの振返りには,次のようなものが多く見られた。 自分たちの対話の実態を可視化したことにより,現状を把握し,自分たちの対話で何を目指すのか,質の高い対話を目指すためにどのような視点を大切にすべきかを子どもたちは理解することができたといえる。そして,質の高い対話の必要性を獲得したこのタイミングで対話カードを子どもたちに配布し,実際の授業でよりよい対話の実現を目指し,対話カードを使用していくことを伝えた。 イ 授業における対話 実際に子どもたちの対話がどのように展開していったのか,その変容を見てみる。次に示すのはB校第6学年「三人の武将と天下統一」の4/7Hの授業の子どもたちの対話の様子である。 ・資料からわかったことが多いから,わかったことを基に考えたことをこれからは話していこうと思いました。 ・話し合う時,つなげて話せていないので,つなげて話せるように頑張っていきたいです。 ・青(資料からわかったこと)だけだったら報告みたいになっているから,自分たちの話し合いの時は赤(わかったことを基に考えたこと)をもっと増やしたいです。 T 調べてわかったことを基に豊臣秀吉の行った政策にはどんな意味があるのか,グループで考えましょう。 小学校 学習指導法 16 C1 前僕やったからC2さんからどうぞ。 C2 えっと,他の大名と一向宗の仏教勢力をおさえて天下統一を成し遂げたことと,大阪を中心とした物資の流れをつくって金や銀の鉱山を支配したりすることで収入を確かにした。平定した国々の検地を行い,田畑の広さや土地のよしあし,耕作している人物などを調べて天下統一を目指した。 C3 すご~い。 C4 (拍手) C2 (資料の)前半しかできなかった。 C3 (C4さんに発表の順番を促す) C4 金や…銀の鉱山?を支配したりすることで莫大な財力をたくわえて…え~っと~,海外にも,天下統一した秀吉は海外にも目を向けて中国を征服しようとして二度にわたって大軍を送りました。 C3 え~っと~,大阪を中心とした物質(ぶっしつ)? C4 ん~,物資(ぶっし) C3 物資(ぶっし)の流れを作ったり金や銀の鉱山を支配して莫大な財力を蓄えて,田畑を広さやよしあしを調べて,耕作している人物も調べて,収入を確かなものにした。 C1 ばくだいな?ばくだいな財力を蓄えたことはよかった。 (まとめると秀吉は)資金化した? C234あ~。 C4 資金化か~。 T 時間です。前を向きましょう。 このやり取りで確認できるように,実践を始めた当初の子どもたちの対話には,いくつかの課題が見られる。まず,司会の役割が十分機能していないことである。教師の発問ではどんな意味があるのかを調べたことを基に話し合うことが求められているが,司会の役割が未分化であるため,出てきた意見を整理したり話合う方向性を示したりすることができず,対話の主眼が曖昧となり,豊臣秀吉の政策の意味や意義を議論するという目的になかなか到達することができていない。次に,子どもたちが話し合った内容は,それぞれが調べた事実の紹介で終わっている点である。グループの対話の目的は自分が調べた事実を基に考えを深めていくことである。しかし,この対話では各自が調べた事実の紹介で終わっており,また,対話の内容も教科書などの資料に書いてある文章をそのまま転記したものであるため,新たな発見,深まりがあまり見受けられない。最後のC1児がそれぞれの意見を集約して考えたことを示したことで,子どもたちの思考がようやく深まった様子がうかがえる。 最後の場面に見られるような考えを深める対話の充実を図るため,まず,授業中の学習体型を3~4人で対面化し,必要に応じ,いつでも互いの顔を見ながら対話をすることができるようにした。環境条件を整えることにより,対話が子どもにとってより当たり前になるようにした。授業は先述したように大きく二段階で構想するようにし,見

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