ワークシートの左側には子ども同士のグループでの対話の記録を貼り,どのようなやり取りをしていたのかを確認することができるようにすると共に,右側にはそのときに使用した資料を添付し,それぞれを比較することができるようにした。また,この対話の様子をどのような視点で見ていけばいいのかを明確にするため,資料からわかったことを青で,わかったことをもとに考えたことを赤で,その他の対話については黄色を用いて対話の実態を分析するようにした。 間に保障することができたといえよう。 また,二段階の構成による発問を設定したことにより,子どもたちは習得した知識を根拠や理由としながら思考する場面も増えたことで,事象と事象を関連付ける力が高まっていった。次に示すのはA校第4学年の「きょう土をひらく~琵琶湖疏水~」の学習の5/12Hの学習の様子である。 下線①の発問で子どもたちは具体的な事実について調べたことを確認している。そして下線②の発問では,北垣知事がなぜこの時期に建設しようとしたのかを考えているのがわかる。その際,下線①の発問で習得した知識を関連付けた発言が多くみられる。例えば,C1は別の資料を用いて京都の人口が減少したことを琵琶湖疏水建設の根拠として示している。人口減少の解決策として下線①の発問で習得した街をきれいにするという事実を,京都をにぎやかにするためという考えと関連付けながら主張を展開している。 このように問いを焦点化し,見方・考え方を子どもたちが適切に働かせることができるような学T ①北垣知事はどうして琵琶湖疏水をつくろうとしたのでしょう。 C1 飲料水に利用しようとした。 C2 舟を通して荷物を運べるようにした。 C3 きれいな水を京都に流し,街をきれいにする。 C4 前と比べてよいことが7つくらいあるから, C5 街をきれいにするのも京都の人のよりよい生活のため。 C6 防火用水にも利用できる。 C7 農業にも使われて,きれいだとおいしくお米が作れる。 T 琵琶湖疏水をつくるよさはいろいろあるようです。でも②以前も琵琶湖から水を引く工事の計画はありましたが,難しいので実現しませんでした。しかし北垣知事はそれからたった50年後にその工事を計画しています。なぜこの時期に琵琶湖疏水をつくろうと考えたのでしょうか。 C1 にぎやかにするために北垣知事は琵琶湖疏水をつくろうとしたのだと思います。(別の資料を提示して)都が東京に移ってしまって人がどんと減ってしまってさみしくなったので,きれいになったら人が増えると思ったから。 C2 より安く荷物が運べるようにするとあるので,商人が都に行ってしまったので,琵琶湖疏水をつくって安く荷物を運べるようにすると,商人の人も材料とかも安く運べてお得だから人が増えるからつくろうとした。 C3 江戸時代の時は京都の町の人口は多かったけど,都が東京に移っていって人口が減っていったので,京都の町をもっとにぎやかでよりよい街にするために琵琶湖疏水をつくろうとした。 C4 江戸時代は人口が多かったけど,水をきれいにして街をきれいにしてよりよい街にして人口を増やそうとしたから,人口が少ない時につくろうとした。 C5 京都が住みよい暮らしができないということだから,琵琶湖疏水を建設してきれいな水を京都に流して人を取り戻そうとした。 C6 商人が少なくなってしまうので,不自由な暮らしになってしまうので,きれいな水を街に流すなど水を流すことでよりよい生活にしていこうとした。 習場面を各時間に設定したことで,子どもたちは習得した社会的な事実を活用しながら意味についても深く考えることができるようになっていったといえる。「火事をふせぐ」の単元では習得した知識を十分関連付けながら思考することができていなかった面も見られるが,「きょう土をひらく」の単元では適切に関連付けて思考している子どもの変容が見てとれる。習得a活用aのサイクルを繰り返してきたことにより,子どもたちの見方・考え方を成長させることができた結果であると考えられる。 (2)対話によって深まる学習 ア 対話の実態をとらえる 子どもたちが自分たちの対話の実態をとらえることができるようにするため,普段の授業の中で,グループではどのようなやり取りをしているのかを撮影した。さらに,その記録を文字に起こし,子どもたちが文章で確認しながら振り返ることができるようにした。図3-3はB校第6学年でその際に使用したワークシートである。 さらに,子どもたちが自分たちの対話についての問題意識を高めることができるようにするため,あらかじめ集計した対話についてのアンケートの結果を提示するようにした。次頁図3-4は子ども使用した 資料① 使用した 資料② 19 図3-3 対話の実態把握ワークシート 小学校 学習指導法 15
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