001総教C030705H30加藤最終稿
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このやり取りに見られるように,子どもたちはそれぞれの発問で事実と意味のそれぞれを適切に調べ,考えることができたのがわかる。下線①の発問では,子どもたちは火事が起きていないときの消防士はどのような活動をしているのかを具体的に調べている。そのような事実を習得した子どもたちは,下線②の発問をすることにより,なぜそのようなことをしているのか,そうすることでどのようなよさがあるのか,その活動の意味を①の発問で見えた事実と関連付けて考えを深めているのがわかる。 このように,各時間の発問を二段階に分けて授業を構成したことで,問いが焦点化され,何を調べたらいいのか,どのようなことを考えたらいいのかを明確にすることができ,子どもたち一人一人が適切に見方・考え方を働かせることができるようになった。さらに,発問を二段階に分けて設定することで,その時間に習得した事実を生かしながら思考することにつながっていった。一段階の発問では全体で事実を確認するため,子どもたちが思考する前提となる知識を確実に共有するこができる。これにより,二段階の意味を問う発問を通じ,すべての子どもが習得した知識を活用して思考する場面を無理なく設定することができ,思考を深めることができるようになった。基礎的な探究における習得aと活用aのサイクルを各時 下線①の発問は,火事が起きた時に被害を小さくするために各機関が連携していることをとらえることを意図している。その発問を受け,子どもたちは適切に見方・考え方を働かせ,被害を小さくするための工夫や関係機関との協力などのしくみを調べることができている。 18 C1 消防隊の人はポンプ車とかを使ってやっていました。 C2 消防隊が化学車に乗ってやっていました。 C3 火を消す人と助ける人で役割がわかれている。 T 助けるは誰がやってるの? C3 消防署の人が助けるけれど,その間に水をかけて消す人がいる。 C4 火事を消すために消防士の人はもちろんだけど,警察の人か交通整理をしたり,電力会社の人とかガス会社の人の協力もあって火事を消している。 T 電気とガス会社の人はどんなことをしている? C4 ちょっと見つけられない。 C5 消防指令センターの人も協力して大切なことをしていました。 T 消防指令センターの人は何をしているの? C5 火事が起きましたよ,ということを伝えています。 C6 消防隊の人たちは水で消せない火災のとき,薬の入った泡を出して消火している。 C7 消防隊の人がはしご車を使って高い所にいる人を助けたりおろしたりしている。 C1 C4に付け足しで,火とかの近くは主に消防隊の人がやってるけど,水を出したり交通整理をしたりするのは別の人たちがしている。 C9 体が不自由な人や高齢者の人がいる時,いち早く病院に知らせている。 T ではちょっとまとめていきましょう。消防署がやっていることもあります。それ以外の機関がやっていることもあります。やっていることって一緒? C10みんな同じ目的でやっている。 C4 いろいろな人が役割分担をしてやっている。 T 関係機関が協力してやっているね。 T ①消防士の人は火事が起きていないときにどのようなことしているのだろう。 C1 お年寄りをはじめ,各家庭に行って防火指導をします。 C2 災害現場での活動を話し合ったり勉強したりします。 C3 トレーニングをしています。 C4 使った道具を点検したり,ホースを片づけたり次の出動に向けて準備をしたりしています。 C5 消防士の人は休憩時間に自主勉強やお風呂,仮眠や洗面などをしているのがわかりました。 しかし,この発問だけでは社会的事象の事実をとらえることはできるが,なぜそのような仕組みをとっているのか,その理由まで子どもたちが考えることは難しい。実際の授業でも,子どもたちの発言内容は火災現場における様々な役割があるという事実を列挙している段階や,それらを総じて,関係機関との協力,といった言葉で事実をまとめる段階で終わっているのがわかる。このように事実をとらえるだけではなく,なぜ関係機関と協力することが大切なのか,という視点から社会の仕組みの意味について考えることにより,より深い社会認識を育むことができるようになる。 そこで,次の6/11Hでは次のように発問を二段階に分け,事実をとらえる場面とその意味についた考える場面のそれぞれを設定するようにした。 小学校 学習指導法 14 C2 災害現場での活動を話し合ったり勉強したりします。 C3 トレーニングをしています。 C4 使った道具を点検したり,ホースを片づけたり次の出動に向けて準備をしたりしています。 C5 消防士の人は休憩時間に自主勉強やお風呂,仮眠や洗面などをしているのがわかりました。 T なんでそんなことしてるの?なんでお風呂入ったり仮眠したりするの? C6 火災は24時間いつ起きるかわからない。交代しながら出動するから,仮眠とかお風呂は休憩する時間にします。 T つまりこの人たちは24時間働いているということかな。 C7 お寺などで火事などが起きた時に備えて,訓練をその現場で行っている。 C8 火災現場での活動内容を記録します。 C9 地域の人たちに災害とかの備えを指導しています。 T ②火事がない時でも結構いろいろなことをしていますね。消防署は火を消すことが仕事です。でも,火事が起きていないときにやっていることって,火を消すための仕事だけじゃないよね。なぜこのようなことをするの? C1 消防は消火するとき以外にも救助のためもあるから。 C7 火災はいつ起きるかわからないから,油断しないように準備している。 C8 早く人に被害とか怪我とかさせないように,たくさん燃え移らないように,被害を小さくするため。 C9 消火以外の活動をするのは,防災指導をするのは,火災を少なくするためなので,火災をできるだけ少なくするための活動をしている。

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