平成14年にも実施されており,その中で困りを抱える児童生徒の実態が明らかにされ,以後の法令の施行や改正の中で対象となる児童生徒への特別な教育的支援の拡充が図られてきた。この様々な教育的支援の中で中核を担っているのが,LD等通級指導教室である。 LD等通級指導教室の立脚点である通級による指導は平成5年に制度化され,平成18年に指導の対象として自閉症と情緒障害を区別するとともに,新たにLD,ADHDを加え今日まで運用されてきた。この中で,通級による指導を受ける困りを抱える児童生徒数は右肩上がりに増え続けている。 図1-2は文部科学省「平成29年度 通級による指導実施状況調査結果」(3)の「通級による指導を受けている児童生徒数の推移」を基に作成したものである。 平成29年5月1日現在,全国の公立小中学校で通級による指導を受けている児童生徒数は10万8,946人である。図1-2からは,通級による指導を受けている児童生徒数が平成18年と比較して約2.6倍となっていることがわかる。さらに増加の内訳をみると,旧来から通級指導の対象であった言語障害,難聴,弱視,肢体不自由及び病弱・身体虚弱の児童生徒数が漸増であるのに対し,平成18年以降LD,ADHD,自閉症,情緒障害の児童生徒数は急増していることが分かる。この数は平成24年にLD等通級指導教室で学ぶ児童生徒の過半数を占め,現在は総数のうち約63%となっている。これは近年のADHD,LD,自閉症,情緒障害のある児童生徒への支援の必要性の高まりを明確に示す例である。 LD等通級指導教室で学ぶ児童生徒の増加とともに,LD等通級指導教室の設置数も年々増えている。 図1-3は全国の通級指導教室入級者数と小,中,小学校 総合育成支援教育 3 特別支援学校におけるLD等通級指導教室の設置校数を示したものである。 図1-3からは入級者数の増加に合わせLD等通級指導教室が随時追加されてきていることが分かる。各年度の増加数には幅があるが,特に平成28年度,平成29年度には平成28年4月施行の障害者差別解消法に背中を押される形か,それぞれ674校,770校と大幅な増加が見られる。全国的にその数が増加し,実践が進められる中で有用性が公知されるようになると,今後さらにLD等通級指導教室の数が増えることは間違いない。 各年度の1校あたりの入級者数を見ると,18.0人から19.6人の間で推移している。この経過を見ると一つのLD等通級指導教室において指導を受ける児童生徒の数は安定しているように見える。しかし,別の見方をすると,LD等通級指導教室が増えた分だけ入級する児童生徒が増えている状況とも取れるのではないだろうか。 平成29年度の文部科学統計要覧(4)によれば,全国の小学校,中学校に在籍する学齢期の児童生徒の人数は約990万人である。これに対し,LD等通級指導教室で学ぶ児童生徒は約11万人で,全体の約1.1%である。しかし,冒頭で述べた通り,困りを抱える児童生徒は約6.5%存在すると想定されている。仮に一つのLD等通級指導教室で20人の児童生徒を指導するとして,あと約2万6000校分のLD等通級指導教室が不足していることになる。つまり,LD等通級指導教室の設置数が,困りを抱える児童生徒のLD等通級指導教室への入級の希望数に追い付いていないのである。現に設置されているLD等通級指導教室の入級可能人数を需要が上回ることで,入級を希望してもそれがかなわないことも少なからず起きている。また,「保護者65 図1-2 通級による指導を受けている児童生徒数の推移 図1-3 通級指導教室入級者数と設置校数
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