001総教C030705H30馬場最終稿
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あった。これに対し,指導後(11月)は,「当てはまる」とされた児童の割合は54%と減少したが,「やや当てはまる」で43%に増加した。その結果全体の97%が,担任から見て概ね満足できる姿となっていることが分かる。同時に「当てはまらない」とされた児童はいなくなり,「あまり当てはまらない」とされた児童も3%に留まった。これらのことから,児童の自己評価での結果と同様に児童の力が全体的に上向きにスライドしたと考えることができる。 このような結果は,指導した他のターゲットスキルにおいても同様に見られた。 図4-5は担任によるチェックの変容を,指導したスキルごとにまとめたものである。A校①②③おいて,図4-3で述べたA校④と同様に,「当てはまる」「やや当てはまる」とチェックされた割合の合計が指導前に比べて増加している結果が見られた。 このような形で,児童の力が全体的に上向きにスライドするような変容の形は,児童の自己評価での結果も踏まえて考えると,学級SSTを行った際の児童の変容の標準的なパターンと捉えてもよいかもしれない。 一方で,同じくA校④と同じように指導後の「当小学校 総合育成支援教育 25 てはまる」の割合が減り,「やや当てはまる」の割合が増加したものとしてB校②が挙げられる。この理由としては,前項で述べた仮説と同様に,担任のスキルに対する捉え方が変化したこと推測された。研究での実践終了後に行った担任へインタビューではこの件に関して「指導内容や指導手法を考えることや,児童のスキル使用の様子を観察することで,担任のスキルに対する認識がより具体的で高度なものになった」という声が聞かれた。 (4)個人の変容の分析 本研究では,学級SSTを通して児童全員のソーシャルスキルに関わる力を育成するのと同時に,学級に在籍する困りを抱える児童の育成することに重点を置いてきた。ここではLD等通級指導教室等との連携をしながら行った研究の実践により,困りを抱える児童がどのように変容したのかについて述べる。 図4-6は,M児に対する指導前後のチェックの結果を示したものである。このグラフでは担任によるチェックと児童によるチェック(自己評価)をそれぞれ4つの軸で示している。 破線で囲まれた領域が指導前,実線に囲まれた部分が指導後の数値を示している。「担任チェックスキル①」の軸を見ると,指導前に“1”であったものが指導後に“2”へと変化していることが分かる。担任チェックの他の軸を見ると,いずれも1ポイントずつ数値が上向きに変化しており,担任によるチェックにおいては,指導したすべてのターゲットスキルにおいてM児のソーシャルスキルに関わる力の向上が認められる。児童によるチェックでも同様に,全てのターゲットスキルにおいて力の向上が見られており,特にスキル①②③については2ポイントずつ数値の増加が見られる。 87 図4-5 担任のチェックの変容 図4-6 M児の変容

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