001総教C030705H30馬場最終稿
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82 基に児童のスキル使用回数の目標と実際の使用回数をまとめている。ここからは複数の児童の目標設定の不的確さが見て取れる。“奈良・兵庫・鳥取”などである。高い目標を設定することでスキル使用を諦めてしまうことが予想されたため,目標達成時にもらえる個人用賞状(後述)を用意するなどして実現可能な目標を設定できるよう手を入れたが,ほとんど変化が見られなかった。また,“福井”のように取り組んだ期間と対比するとスキル使用回数が顕著な児童が見られた。これはスキルを使用するということではなくカードを埋める,シートのゴールに行きつくことが目的になった結果かと思われるが,このような児童は学級SSTが2回目3回目と回を重ねるごとに増えていった。ミッションカードの第1義はスキルを使ってみようとする意欲喚起であり,その役割を果たしていることを考えれば差支えないが,中・長期に渡って繰り返し学級SSTに取り組む際にはカードやシート以外の手立ても講じる必要があると感じた。さらに少数ではあるが,“滋賀”のようにメイン指導―サブ指導間にミッションカードを紛失する児童も見られた。こちらもカードの保管場所の整備や個別の対応の必要があると考えられる。 また,この取組では結果的に正確なスキル使用回数を把握できず,スキル使用の生起回数をスキルの定着度等の指標とすることはできなかった。必要に応じて観察者を置くか,スキル使用時の日時を記録させるなど別の手法を用いる必要があると思われる。 (2)児童へのフィードバック スキルの質を高めたりスキルの般化を促したりするために様々な場面でのフィードバックを行った。ここではメイン指導の中で行われるもの以外について述べる。 a)サブ指導でのフィードバック 前述の通り,サブ指導ではスキルの使用場面の振り返りや二段階SSTを行ったが,ここでのフィードバックは指導後の児童のスキルの般化や維持に直接関わるものであり,学級全体でスキルの価値を確認したり共有したりする上で重要であると考えた。 実践の中では児童のスキル使用場面の様子を聞き指導者や周りの児童がフィードバックを行なったり,その場面を再現したロールプレイを行い学級全体でその是非や解決策について考えたりする活動を行う中で,以後のスキル使用へのヒントや小学校 総合育成支援教育 20 T:前回の学級SSTから今日までに,どんな場面でスキルを使いましたか。 C:弟とお母さんが話している時,話し終わるのを待ってから自分が言いたいことを話すことができました。 C:昨日,先生と他の子どもたちが話している時,話が終わってから話しかけました。 T:先生とKさんが話している時,横にYさんがやってきて,すぐ近くに立っているからどうしたのかなと思っていたら,「すみません」と声を掛けてから「トイレに行ってきていいですか」と聞くことができていました。スキルをしっかり使うことができていて,感心しました。 C:先生がほかの人を叱っている時,話が長くなりそうだったので,「すみません」と話しかけました。すると「今話をしてるやろ」と言われて話すことができませんでした。どうしたらよかったのか分かりません。 T:そうでした。しっかりとスキルを使えていたのにきつい言い方をしてしまってごめんなさい。次からは先生もしっかり話を聞けるようにします。でも,他の先生だったら同じように「後にしなさい」と言われることもあるかもしれません。そういう場合はどうしたらいいでしょう。 C:いやなことは忘れればいいと思います。 C:(児童考え込む) C:言いたいことを紙に書いて,少し離れたところから先生にアイコンタクトで呼びかけてその紙を見てもらえば話しかけなくても伝わると思います。 C:(一同納得) より高度なスキルを確認することにもつながった。 A校のターゲットスキル④相手の話を最後まで聞いてから話す のサブ指導では次のようなやり取りが行われた。 ここではスキルをうまく使うことができた場面を交流するだけでなく,スキルを使ったにも関わらず好ましい結果が得られなかった場面を児童が指摘した。これにより,学んだスキルを使ってもうまくいかないことがあることやそれを避けるためにどうすればいいか別の対処法を知ることができた。また,学級に在籍する児童の最も身近なモデルでもある指導者側の行動の振り返りにもつながり,その行動の修正にもつながった。 このようにスキルを振り返ったり,様々な場面を経験したり想定したりした場面でのスキルのバリエーションを増やすことは,結果として日常生活でそのスキルを使ってみようという児童の意欲の向上につながり,般化を促すことにつながると考えられる。

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