001総教C030705H30馬場最終稿
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図3-3 SSTシートの後半部 間の長短,指導の場所,ターゲットスキルの内容如何を問わず,「ゲーム・活動」と「ロールプレイ」をリハーサル場面として想定し,具体的な方法を記載できるようにした。どちらの場面を選択するにせよ,できる限り自然な形で繰り返しスキル使用することが目的である。 実践の中では,「ゲーム・活動」を用いたリハーサルはA校B校でそれぞれ1回ずつ行い,その他は「ロールプレイ」を用いた。学級を対象としたSSTであるため,どちらの活動を行う場合でも全ての児童の様子を把握するのは難しい。そこで,三人一組のグループで活動することにした。「ゲーム・活動」では少人数でグループを組むことでスキル使用の機会を多く確保することにつながった。また,「ロールプレイ」では2人がロールプレイを行い,その様子を1人が観察することで客観的にスキルに含まれるコツや要素を確認することができた。ここではグループ内に観察者がいることで,その後の「褒めて助言し(フィードバック)」の際,児童の中からより良いスキルの使用法や気を付けないといけない点などについて助言し合うことで共通理解することができるようになった。指導者は各グループの様子を俯瞰しつつ,学級内で困りを抱えている児童に対しての支援を行うことに注力することで,より効果的に支援を行うことを目指した。 「褒めて助言し」ではリハーサルの場面で取り組んだことに対して行われるべきフィードバックを図示した。指導者が児童を褒めたり,改善案を示したりするだけでなく,指導者の姿をまねて児童が他の児童に対し同様のフィードバックを行うことを求め,重視しているためである。これは児童によるフィードバックの効果の大きさやその精度の向上を勘案した結果である。 これまでソーシャルスキルを向上させる際に対象児の周りの仲間を介入させるという研究が多く小学校 総合育成支援教育 17 行われてきており,この中でマシューとラダフォード(11)は「仲間は対象となった子どもの行動を持続的に,自然な場面でモニターすることができるので,教師よりも効果的な行動変容の担い手になれる。」と述べており,研究によっては「仲間の影響力をそのまま利用すれば教師が直接フィードバック等を与える必要はない」と結論付けているもの(12)も見られる。教師のフィードバックやサポートが不必要とは言わないが,仲間からのフィードバックを活用した方がスキルの般化を目指す上でより効果的な指導になると考えた。 「使わせる」では児童のスキル般化や維持を促すためにどのようなことを行うかを記述するようにした。学んだソーシャルスキルを児童が使うことができなかったり一時的にしか効果が見られず結果的に使われなくなったりしてしまうのではなく,ここで具体的なスキル使用の計画を立てることによって指導後の児童のスキル使用を担保し,継続させることで般化につながると考えた。本研究では次節で詳述するミッションカードを活用したスキル使用・記録を具体的なスキル使用の中心に位置づけ,児童に取り組ませた。 このような意図でSSTシートを作成し,用いた後,指導の計画・実践を行った研究協力員に対し「使いにくかったところや改善すべきところ」について聞き取りを行った。これに対し,「指導すべき項目はすべて揃っているので不足はない」,「指導の骨子が示されているので,無駄な発問や質問など,蛇足となるものを指導に含めなくてよい」という肯定的な返答があった。また,指導内容によっては「①やってみせ~⑤使わせる」の項目の順を違えて指導する場面や具体的な発問などを記したい場合もあるが,こちらもシート内に書き込むことができるので問題ないと回答された。 さらに,指導の中では,児童の反応を見ながら指導者が補足の指示をしたり,予定した時間では思うような効果が得られないと判断した活動の際には時間を調整したりする様子が見られた。大まかな指導の骨子を組み立てるシートを作成することによって,余裕をもって児童の様子や状況に合わせた指導ができている印象であった。 詳細な指導案を作成するには,多くの時間を必要とするが,そういった時間を掛けることが難しい指導者にも作成しやすく,指導の際に手掛かりとなるものがあることで,心理的な余裕にもつながり,獲得させたいスキルの指導に集中できた点で,このシートは大いに成果を示したといえる。 79

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