78 用を振り返るようにした。 例えば表3-1のB校③であれば,「行動する前にじっくり考える」というターゲットスキル獲得のために「結果を考える」というスモールステップを設定した。ここでのメイン指導はワークシートを用いて,示された条件に対して考えられる行動と,その行動をとった時にどのようなメリット,デメリットがあるかということを考える活動を設定した。 抽象的なスモールステップが持つ曖昧さを補完するために,ここでは児童の実態に合わせて複数の場面や状況を提示することで,短絡的に行動するのではなく,時には我慢することも含めてより良い行動を選択できることをねらった。 例えば“夕食は好きなメニュー,目の前にはおいしそうなおやつがある”という場面でおやつを食べるか食べないか。食べるという行動をとった場合,おいしいおやつを食べられるが夕食は食べられない,食べずに我慢すると,夕食で好きなものをたくさん食べられるが,おやつは食べられない,といったものである。活動の中では,ペアでの話し合いや複数場面をロールプレイすることを通して,どのような場面であっても「その後の結果を考えてから行動した方がよい」という意見を持つ児童が多く見られた。また,上の例でいえば「おやつを少し食べる,そうすればごはんもおやつもおいしい。」といった他に考えられる行動はないかということについても留意する姿が見られた。 サブ指導ではメイン指導以降の日常場面で起こったスキルの使用場面を想起させ,学級全体で交流した。スキルを使用することで生まれた好ましい状況の共有や,うまくスキルを使用できなかった場面に対する代替案などについて担任や児童からのフィードバックを行った。 (2)SSTシートの活用 スモールステップの設定後,SSTシートを用いてメイン指導を計画した。このシートは前述の通り,各教科等で作成されるような詳細な指導案ではなく,指導の骨子になる部分を構成するためのシートである。今回実施した7つの学級SSTのうち,2つは筆者が,残り5つを2校の研究協力員である学級担任が作成・実施した。ターゲットスキルを選択した状態からの作成ではおよそ5~10分で記入が完了した。 図3-2はSSTシートの前半部を示したものである。「やってみせ」と「言って聞かせて」を示している。 小学校 総合育成支援教育 16 「やってみせ」の項目では,指導したいスキルをどのようにモデリングするのかについて選択するようになっている。指導者や児童,ワークシート教材,ビデオ教材等モデリングに用いるものと,それが示すスキルの様態(良い例,悪い例等)が選択肢として挙げられている。「あいさつをする」というターゲットスキルを指導する際に,担任が丁寧なあいさつとぶっきらぼうなあいさつを例示するような場合は,図3-2で示したように「指導者-良い例&悪い例」となる。また,児童が体験したことをロールプレイし,「どうすればよかったのかな?」などとその様子について是非を問うようなモデリングの方法にする場合は「児童-疑問型」と選択し,ビデオ教材を用いてぶっきらぼうなあいさつのみを示す場合は「その他-悪い例」という形で選択することになる。 「言って聞かせて」では〈何を学ぶのか〉〈なぜ必要なのか〉〈どのようにすればいいのか〉の三項目に記述する形となっている。〈何を学ぶのか〉はターゲットスキル,〈なぜ必要なのか〉はスキルの必要性や学ぶ意義,〈どのようにすればいいのか〉はスモールステップをそれぞれ示している。実際に学級SSTを行う際,児童にこれらの理解が不足していると,スキルの獲得に支障が出る。そこで,SSTシート内で明記するのと共に,実際の指導場面でこれらすべてを指導者が示すのではなく,できる限り児童の口から引き出すよう発問することに留意した。 右図3-3はSSTシートの後半部を示したものである。「させてみて」「褒めて助言し」「使わせる」の部分を示している。 「させてみて」の場面では児童が実際にスキルを使用する経験をするため,SSTの中で最も重要な部分として捉え,児童の理解の深長やスキルの使用への意欲の向上を目指した。ここでは指導時 図3-2 SSTシートの前半部
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