001総教C030705H30馬場最終稿
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くいことが想定されるので,動作を代替できるペープサートや人形,本人の考えを聞いた上での指導者による代理演技などの準備をしておくことも大切であると考える。 第2節 学級SSTの実践 学級の児童の実態に合わせて学級SSTを実施することで一人一人の力が育成されれば,学級全体にも良い影響を与えることができると考える。学級SSTの内容や方法だけではなく,いかにして児童のソーシャルスキルに関わる力を見極め指導すべき内容を決定するのか,また指導によって起こる児童の変容をどのように見取るのかということも含め,包括的に考察を進めていく。ここでは統制群は置かないが,一つ一つの取組での児童の観察からSST指導の意義や課題点を明らかにする。 (1)指導の全体像 図2-2は実践の流れを示したものである。以下,SSTの実施について,流れに沿って説明していく。 「学級を対象としたソーシャルスキルの測定」では,学級に在籍する児童全員を対象としてソーシャルスキルの評価尺度を適用し,教員による他者評価と児童自身の自己評価を基に,ソーシャルスキルに関わる個人の得手不得手,学級集団としての優れた点や課題点を明らかにする。「ターゲットスキルの設定」及び「スモールステップの設定」では,ソーシャルスキルの測定によって明らかとなった個人や学級の課題を基に,児童らの思いを反映させた上で指導すべきソーシャルスキルを決定するとともに,それを習得する上で必要と思わ小学校 総合育成支援教育 9 71 図2-2 実践の流れ れる下位項目を精査し,実際に指導する内容を決定する。「学級SST」では学級の実態に合わせて実施する時間や場所,手法を変えながら取り組む中で,全体を指導しつつも困りを抱える児童への個別の支援に留意しながら取り組む。ここでは,児童の実態に合わせ,より簡便にSSTを行うことができるように指導の計画用シートを提案する。「ミッションカードによる般化の支援」では後述するミッションカードおよびミッションクリア賞状等を用いて日常場面でのスキル使用を援助しつつ,指導者,学級の仲間によるフィードバックの充実を図るのと同時に,学級でのスキル般化のために構造化した取組の有用性についても検証していきたい。 これら一連の指導ののち,改めてソーシャルスキルの評価尺度を適用し,指導前の結果との比較をすることで学級SSTの指導効果を測る。学んだスキルが般化されていない場合や,維持されない場合はターゲットスキルの選定や実際の指導に不備がないかを確認し,スモールステップを変更したり,必要に応じてフォローアップの指導を行ったりする。 (2)ソーシャルスキルチェックシステム ここでは研究の中で使用するソーシャルスキル尺度について述べる。ソーシャルスキルは集団によって変化したり,状況に合わせて求められる応答が変化したりする多様性をもっており,学校において必要となるソーシャルスキルを全て書き出すことは不可能である。そのため多くの場合,いくつかの代表的なソーシャルスキルを領域ごとに整理し,その領域の中で系統立てて複数回の指導が行われることが多い。しかし,一見合理的であるように思えるこの方法は,指導内容が児童の実態に沿ったものであるのか,本当に児童生徒にソーシャルスキルが身についているのかの判断がしづらい。適切に判断できないと結果的に指導したという実績のみを残し,スキルの般化につながらない「やりっ放し」のSSTとなってしまうことが懸念される。また,これまで学級を対象としたSSTの先行研究を概観すると,学級に在籍する困りを抱える児童生徒がどのように変容していくかという,個人を対象とした研究がその多勢を占めている。しかし,学級でのSSTで変容するのは一人だけではない。児童生徒相互の様々な関わりの中ですべての児童生徒が変容しているはずである。そこで,今年度は学級に在籍するすべての児童のソーシャルスキルの力の測定を行い,その変容を視覚

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